ウロコに覆われた姿で作られたティラノサウルスのロボット
大型肉食恐竜ティラノサウルスはやはり、映画「ジュラシック・ワールド」に登場したように、ウロコに覆われていた――こんな研究成果を豪州や米国などの研究チームが英専門誌に発表した。羽毛が生えた「祖先」の化石が見つかり、近年は毛がふさふさの想像図が描かれることもあった。
ティラノサウルスは白亜紀末期(約6600万年前)に北米にいた大型恐竜。当初はウロコに覆われていると考えられていたが、白亜紀前期に中国にいたティラノサウルスの祖先にあたる、小型恐竜ディロングが羽毛を持っていたと2004年に発表。12年には大型の仲間で全長9メートルのユウティラヌスにも羽毛の証拠が発見、全長10メートル級のティラノサウルスも羽毛が生えていたとする説が高まっていた。
ところが今回、米国の博物館にあるティラノサウルスの化石を調べると、首と腰、しっぽの周りが細かなウロコで覆われていた。
大型動物は体が羽毛で覆われると、体温が上がりやすく、熱帯のゾウやサイは毛がほとんどない。ユウティラヌスは大型だが体重は推定約1・4トンで、ティラノサウルスの5~8トンより軽く、体温が上がるおそれが低かったと推定。白亜紀後期にいたティラノサウルスの大型の仲間タルボサウルスやゴルゴサウルス、アルバートサウルスなどの化石からもウロコが見つかっており、研究チームは、白亜紀前期の羽毛を持つ小型の祖先から大型に進化する中で、白亜紀後期のティラノサウルス類はウロコを持つようになったと結論付けた。
国立科学博物館標本資料センターの真鍋真ディレクターは「今後、ティラノサウルスの復元では首筋から背、腰、尾にかけては羽毛ではなく小粒のウロコに変更されることになるだろう。一部にウロコが見つかっても全身ウロコだったとは言えない。さらに良好な化石の発見が待たれる」としている。(小堀龍之)