注射剤によって意識障害などを伴うアレルギー症状「アナフィラキシーショック」となり、死亡したとみられる事例が、昨秋までの2年間に12件あったことがわかった。予期せぬ死亡事故を調べる国の医療事故調査制度に基づく報告を日本医療安全調査機構が調べ、18日に発表した。担当者は「早期に対応できる体制整備を」と呼びかけている。
昨年9月までの2年間の12件のうち10件は、注射中か注射開始から5分以内に呼吸の乱れや吐き気などの症状が出ていた。アナフィラキシーの初期対応として、日本アレルギー学会が指針で示すアドレナリンの筋肉注射をしたのは1件だけだった。
原因となったのは、がんの検査で使う造影剤4件、抗菌薬4件、筋弛緩(しかん)薬2件。造影剤の4件は、いずれも過去に使用経験があった。機構はこうした薬剤を使う際は、最低5分は観察▽アナフィラキシーを疑ったらアドレナリンの筋肉注射をする▽過去に複数回使い安全だった薬でも起きると認識する――などの提言をまとめた。
機構によると、2016年までの10年間のアナフィラキシーショックによる死者は595人。原因は医薬品263人、ハチ185人、食べ物28人。心停止や呼吸停止に至る時間はハチは約15分、食べ物30分に対し、薬剤は5分と短い。(福地慶太郎)