試合終了後、健闘をたたえ合う両校の選手たち=4日、前橋市民球場
第99回全国高校野球選手権群馬大会の開幕を前に、前橋商と前橋工のベンチ入りできなかった3年生の「引退試合」が4日夕、前橋市民球場であった。選手たちは台風に伴う雨が降りしきる中、泥だらけになりながら懸命にプレー。レギュラー選手や下級生たちも声を張り上げて応援し、保護者らもかっぱ姿で見守った。
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引退試合は「夏の大会でベンチに入れない3年生に晴れ舞台をつくってあげたい」と、前橋工の五十嵐卓也監督が前橋商の住吉信篤監督に持ちかけ、3年前から続いている。
背番号入りのユニホームでグラウンドに立った3年生は、前橋商が13人、前橋工が8人。試合序盤は互角だったが、四回に前橋工が突き放して大量リード。途中、雨脚がかなり強くなったため続行不可能となり、残念ながら五回でゲームセットとなった。
それでも選手たちは、全力を出し切った。試合前には、両校の選手が雨でぬかるんだグラウンドを一緒に整備。試合終了後の両チームの整列では、泣いたり笑ったりしながら健闘をたたえ合っていた。
試合後、前橋商の住吉監督は「天気は悪かったが、試合をさせてあげられてよかった」。前橋工の五十嵐監督は「皆が一つになって試合ができた」と話した。
■渾身の力 1球1球に込め 前橋工・白石裕夢君 「主将・4番」仲間に推され 前橋商・若林莉輝君
最終回となった五回、前橋工の白石裕夢君は最後の打者を直球で三振にうち取ると、顔を腕でぬぐいながら、大きな雨粒が落ちてくる空を見上げた。「これで最後と思うと涙が出た」という。
春の県大会ではベンチ入りし、中継ぎで登板した。だが、その後は思うような投球ができなかった。夏の大会でベンチ入りできないと分かった時は「覚悟はしていたけど、やっぱりショックだった」と振り返る。
高校最後の登板となったこの日のマウンドは、悔しい気持ちと同時に「自分の投球が夏の大会での仲間たちの頑張りにつながれば」と願いながら、1球1球に渾身(こんしん)の力を込めた。
前橋商の若林莉輝君も、夏の大会でベンチ入りを逃した一人。「最後の最後でメンバーから外れた。まじめでコツコツやる選手」と住吉信篤監督が信頼を寄せるように、この試合では仲間たちから推されて主将と4番打者を任された。
試合に向けて、幼い時から野球を教えてくれた父裕一さんと打撃練習をし、「三振するぐらい、思い切って自分のスイングをしてこい」と送り出された。安打こそ出なかったが、「自分のスイングはできた。一緒に頑張ってきた仲間と試合ができて、幸せでした」と満足そうに振り返った。(丹野宗丈)