流木をかき分け、不明者を捜索する警察官=8日午後4時59分、福岡県朝倉市杷木林田、金子淳撮影
九州北部を襲った豪雨による犠牲者と安否不明者はさらに増え、被害の全容はなおはっきりしない。避難者の疲労も蓄積する。
おなかの命も奪われた 1歳かばうように妊婦の遺体
豪雨から4日目の8日、福岡県朝倉市でいまだに連絡が取れない住民が多数いることが新たに判明した。
市杷木(はき)支所には豪雨の後、数百人単位で「連絡が取れない」との通報が寄せられ、支所が7~8日に避難所などを調査した。その結果、同市杷木松末(ますえ)では14人がなお連絡がつかないことが分かったという。
山間部にある杷木松末では、赤谷川やその支流が相次いで氾濫(はんらん)。流木や土砂で道がふさがれ孤立する集落が相次いだ。
避難所となった松末小学校の北側は橋が落ちて立ち入るのが困難な状態が続いている。山口県周南市の井上敏彦さん(59)は8日、松末小学校の上流に暮らす連絡の取れない80代の両親、輝雄さんとマサコさんを捜しに訪れた。
実家は普段なら小学校から歩いて10~15分ほどの集落にある。豪雨の後、同じ集落の人たちが固まって避難していると聞き、両親もその中にいるだろうと思っていた。しかし、避難者の中に両親がいないことを7日に知った。実家のある集落にはたどり着けず、「流されてしまったのか……。生きていてくれればいいが。待つしかない」と力なく語った。
8日午後、上流にある集落の一つの捜索から戻った自衛隊員によると、松末小学校から集落までは歩いて4時間かかったという。隊員は「川沿いの被害がひどい」と語った。(稲垣千駿、岡田将平、渡辺松雄)