(8日、DeNA9―0中日)
一度は現役引退を覚悟した35歳のベテランが、花束を受け取った一塁で照れくさそうにほほえんだ。DeNAの田中浩が、六回に通算1千安打。この日、中日の小笠原から放った2本目の適時打で達成した。
まずは三回、1死二塁から左前に先制打。交流戦後は前日までの13試合でわずか1試合しか先取点を許していなかった中日を相手に主導権を握ると、六回は2死満塁で外角直球を中前へはじき返す。7―0にリードを広げ、試合を決めた。
昨年10月にヤクルトから戦力外通告を受け、DeNAへ。新天地で迎えたプロ13年目は、持ち前の粘り強い打撃で存在感を示している。相手投手の利き腕によって左打ちの石川と併用される中、対左腕は打率2割8分8厘で14打点。ラミレス監督は「毎試合出場できなくても、我慢強く準備して、出ればいい仕事をしてくれる」とたたえる。
ナゴヤドームはヤクルト時代にプロ初安打を放っている一方、2011年に最大10ゲーム差をつけていた中日に逆転されて優勝を逃すなど、「中日に勝てずに悔しい思いを多くしてきた場所」。新しいユニホームで区切りの安打を放ち、「一ついい記念になりました」と笑った。
2位阪神とは1ゲーム差に迫った。「チームは常に上を目指そうという雰囲気。1勝でも多く貢献したい」と田中浩。選手として野球を続けるチャンスを与えてくれた球団への「感謝」を込めて、安打を刻む。(上山浩也)
○井納(D) 7回無失点で自身の成績は4勝4敗。「三振を取れるところで取れた。球宴前に五分に戻せて良かった」
○エスコバー(D) 日本ハムから今月トレードで移籍し、新天地で初登板。3人で抑え、「内容にも満足している」。
○田中浩(D) 通算1千安打。昨秋、ヤクルトを戦力外になった35歳は「球団にチャンスをもらい、感謝しています」。