猛暑の中の練習では、適度な水分補給と体の冷却が必要だ
この記事は、主に中学、高校の運動部活動に励むみなさんに向けて書きます。
今の時期、毎年のように、熱中症でみなさんと同年代の部員が亡くなっています。
昨年は奈良県生駒市にある中学校の男子ハンドボール部の1年生が亡くなりました。
8月16日。朝8時35分に始まった練習で、いきなり全員が35分間の持久走を顧問に課されました。給水はありません。ランニングを終えた時、その1年生は倒れました。自力で立つことも水を飲むこともできず、救急搬送されましたが、翌日、死亡しました。
生駒市の事故調査委員会は今年4月に出した報告書で、原因をこう分析します。
「適切な休息、給水時間が確保されなかった」「生徒個人の体格・体力に応じた配慮が不足していた」
この時期のスポーツは頻繁に水分をとるのが常識です。加えて、その1年生は肥満気味でした。ただでさえ過酷なランニングを、みんなと同じようにさせられ、極めて大きな負担がかかったのです。
報告書にはこんな記述もあります。「(1年生が)顧問について家族に『お母さんの千倍も怖い』と言っていた」「当日のランニングについて、他の部員からの聞き取りで『給水はダメじゃないけど飲める雰囲気ではなかった』というコメントがあった」
そして、報告書はこう指摘します。「生徒が顧問に、考えていることや感じていることを自由に発言できる環境が、構築されていなかった」
みなさんの部はどうでしょうか。水が飲みにくく、体格や体力の違いを考えないトレーニングをし、ものを言えない空気があるなら、それは先生が間違っています。
2003年に長女を高校バレーボール部の夏合宿中の事故で亡くした草野とも子さんは、長女の母校で毎年、夏休み前に全校生徒に話す機会をもっています。今年もこう語りかけました。「これ以上はダメと思ったら、休ませてもらいましょう。少しも恥ずかしくないし、怠けていることでもありません。自分の体を守るために必要なことです」
熱中症予防について、よく知らない先生がいるのが現実です。やばいと感じた時、仲間の様子がおかしい時、勇気がいりますが、声を上げましょう。先生が誤っていて、みなさんの判断が正しいことがあるのです。(編集委員)