始球式をした園田竜二君=県営八代
第100回全国高校野球選手権記念熊本大会で16日、熊本市立託麻北小学校6年の園田竜二君(11)=熊本市東区=が、昨春他界した父への思いを胸に、県営八代野球場で始球式のマウンドに立った。
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父の勝喜さんは、会社の人間ドックで異常が見つかり、徐々に家族の名前を忘れるなど症状が悪化。2年前に入院したころには会話もできなくなり、昨年5月に息を引き取った。
勝喜さんは中学生の時に野球部で、大人になってからも草野球のチームに所属していた。足は遅いが肩は強く、巨人の野球中継を見るのが大好きだった。竜二君は、勝喜さんと兄がキャッチボールをしている姿を見て野球に興味を持ち、小学4年生のころに野球部に入部。今は投手などを務めているという。
そんな姿を見ていた姉の咲良さん(17)が昨年末、友人と高校野球の話をしていて「(竜二君が)頑張ってる姿をお父さんに見せたい」と、始球式への応募を思いついたという。恥ずかしがりの竜二君に断られるかと思ったが、伝えてみると数日して「やりたい」と返事が来た。竜二君は決心した理由を「パパが亡くなったから、いいところを見せたくて」と言う。
咲良さんは何とか弟を始球式に参加させたいと、応募の文案を練り、高校の国語の先生にアドバイスをもらい、友人の母に添削してもらった。はがきに竜二君の写真を貼り、「姉からの声」として自分の思いを、「弟からの声」を本人に書いてもらい応募。自宅近くの公園でキャッチボールも練習してきた。
始球式当日、竜二君はマウンドに登ると、帽子を取って丁寧に礼をした。大きく振りかぶって投げた球は、秀岳館の橋口将崇捕手のミットにきれいに収まった。「練習の時より(狙いに)入った」
マウンドから降りた竜二君を迎え、咲良さんは「無事投げれたけん良かった」と、安心したような笑顔を見せた。「天国のお父さんにいいとこ見せられたね」(杉山歩、吉備彩日)