矢田部貴就君
炎天下、球児たちの戦いも熱気を増してきた。ユーピーアールでは宇部商と豊浦がシーソーゲームを展開し、山口大会初のタイブレークにもつれ込んだ。宇部商が逆転サヨナラ勝ちしたが、豊浦の選手たちの健闘にも拍手が送られた。2日間の休みを挟み、再開は21日。3回戦8試合が4球場で戦われ、8強が決まる。
過去最多700試合をライブ中継 バーチャル高校野球で全試合中継の大会も
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柔道との二刀流走りきった 高水・矢田部選手
(18日、高校野球山口大会 光8―1高水)
178センチ、125キロ。遠目にも巨漢ぶりが伝わってくる高水の矢田部貴就(たかなり)君(3年)は四回、2死走者なしから三塁線に鋭い打球を放った。全力で一塁を回ると二塁に滑り込む。「セーフ」。その迫力に、スタンドからは大きな歓声とどよめきが上がった。
小学生の頃から大きな体で、1日に1キロのお米を食べていた時期もあったという。高水に入学すると柔道部から熱心な勧誘を受けた。野球部に入ったが、柔道部も諦めない。心を動かされ、2年生に進級した直後から野球と柔道を掛け持つ生活が始まった。
柔道の試合が近づくと、柔道部の練習に参加。それが終わると野球部の練習に加わった。それまで本格的な柔道の経験はなかったが、今年の3月には団体戦の一員として全国大会にも出場した。
一方の野球。この試合では一回裏、2死三塁で相手の4番打者が一塁付近に高々とフライを打ち上げた。矢田部君はグラブを構えて捕球しようとしたが、落下点よりも前に入りすぎて取り損ねて1点を失った。その後、連打も飛び出し、相手は5点を奪った。
ベンチに帰ると、他の選手は「リラックス」「次、次」と声を掛け、励ましてくれた。そんな仲間たちに、良いプレーでお返しをしようと思った。四回の全力疾走はその表れだった。
チームは点差を詰められずに敗れた。矢田部君の柔道と二刀流の高校野球生活も終わりを迎える。今後は野球一本に専念する。「柔道は畳の上では1対1だけど、野球はミスをしてもカバーし合える」
ミスをしたことや敗れたことは悔しい。でも、この試合で、野球と、一緒にプレーする仲間たちが大好きなことを、あらためて知った。(藤野隆晃)