大阪大会 大阪桐蔭―履正社 試合後、大阪桐蔭の福井主将(右)と笑顔で握手を交わす履正社の安田(左)
(29日、高校野球大阪大会 大阪桐蔭8―4履正社)
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履正社の安田は笑っていた。中堅への会心の当たりを捕られても、逆転されても――。「大阪桐蔭とやるのも最後。気持ち良くやろうと思って」
高校通算62本塁打。全国屈指のスラッガーにふさわしい当たりだった。五回に痛烈な左前安打を放ち、七回1死一塁で迎えた第4打席は初球から打ちにいった。快音。ライナー性の当たりが中堅左に伸びる。だが、中堅手がフェンスぎりぎりで追いついた。アウトにはなったが、大阪桐蔭の投手徳山も、捕手の福井も苦笑いをうかべて胸をなで下ろす。それほどの強烈な打球だった。
「最強」を目指した2年半だった。
12歳上の兄はPL学園の選手で、前田健太(ドジャース)らとプレーした。高校球界のトップに君臨するチームで野球をする兄の姿を見に、グラウンドへ通った。「小さい頃はPL、PLって言ってましたね」
時代は変わった。大阪桐蔭と「2強」を争う履正社へ進み、強打者の道を切り開いた。1年生の冬が明けた頃に「ホームランを打つ感覚をつかんだ」と、急成長。昨夏は2年生の4番打者として甲子園に出場した。
最後の夏は「大阪桐蔭に勝って、チームとして初めての3季連続甲子園出場」を目指した。「自分たちが勝って、履正社が大阪を引っ張っていけるように。後輩たちに、伝統として引き継いでいきたい。ここで歴史を変えたいんです」と。
準々決勝まで15打数11安打3本塁打で13打点と打ちまくり、「今ならどこにでも勝てる」と手応えをつかんで挑んだ直接対決。ライバルの壁は高かったが、悔いはない。
「最後は勝ちたかったけど、強かった。すごい悔しいけど、最後の最後までベストのプレーはできました」。王者の肝を冷やした特大の中飛が、高校最後の打席となった。(山口史朗)