アルジャジーラのムスタファ・スアグ報道局長代理=6日、ドーハ、渡辺淳基撮影
サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、エジプトの4カ国がカタールに対し、「過激思想を流布している」として同国の衛星テレビ局アルジャジーラの閉鎖を求めている。4カ国は6月、カタールとの断交を発表。断交見直しの条件に、アルジャジーラ閉鎖を挙げる。アルジャジーラ幹部は「真実を伝える我々を恐れている」と猛反発している。
首都ドーハにあるアルジャジーラ本部で6日、現場トップのムスタファ・スアグ報道局長代理が朝日新聞の取材に応じた。同氏は「我々は常に複数の意見を、専門家や市井の人々の声で伝えてきた。閉鎖を求める国々の指導者は、国民に一つの意見しか聞かせたくない。問題を明らかにする情報は欲しくないのだ」と閉鎖要求を批判した。
アルジャジーラは、国際テロ組織アルカイダの元最高指導者で、2011年に米軍に殺害されたオサマ・ビンラディン容疑者の独占映像を流すなど、中東のテロ組織や戦争に関するスクープで知名度を高めた。サウジなど4カ国は「アルジャジーラは過激派組織と近すぎる」と批判してきた。
スアグ氏は「アルカイダがテロ組織か否か、判断するのは視聴者だ。パレスチナのイスラム組織ハマスを米政府はテロ組織と呼ぶが、国際法に照らせば不法占拠者に対する抵抗運動ともいえる。人々は馬鹿ではない」と反論した。
アルジャジーラはコマーシャル収入はあるが、予算の多くはカタール政府の支援に頼っているとされる。そのため、「カタール政府の意向を反映した報道になっている」という批判も多い。スアグ氏は「カタール政府の介入や指示を受けたことは一切ない」と強調。具体例としてシリア内戦を挙げ、「我々はカタール政府が(反体制派支持の)立場を表明する前から、アサド政権に批判的な報道をしていた」と述べた。
また、カタールで出稼ぎの外国人労働者が劣悪な労働環境に置かれ、人権団体などから批判されている問題にも言及し、「我々はこの問題を何度も報じてきた。その結果、状況は大きく改善した」と主張した。
カタールの周辺国では、政府に批判的なメディアは排除され、政府系メディアが情報を独占する傾向が強まっている。スアグ氏は「問題は、その国が専制政治かどうかだ。専制国家では本物のメディアは必要なく、メディアがなければ民主主義は存在し得ない」と現状に危機感を示した。(ドーハ=渡辺淳基)