ロシアと日米中首脳間の構図
国際情勢を巡り、ロシアの動向が注目される機会が増えている。プーチン大統領(64)は諜報(ちょうほう)を武器に世界を揺さぶり、影響力の拡大を目指す。来年3月の大統領選で4選が確実視されており、四半世紀近い長期政権を敷くことになりそうだ。日本を囲む米中ロが駆け引きを繰り広げるアジア太平洋の将来は、ロシアの論理を抜きには見通せない。(モスクワ支局長 駒木明義)
米朝の武力衝突を世界が恐れる事態を招いた北朝鮮による7月4日と28日のミサイル発射について、ロシアが風変わりな主張を展開している。2発とも高度、飛距離共に1千キロに遠く及ばない「中距離ミサイル」だったというのだ。
北朝鮮が「大陸間弾道ミサイル(ICBM)を成功させた」と誇らしげに発表し、日米韓も同様の分析をしたにもかかわらずだ。北朝鮮は強く反発。朝鮮中央通信は8月10日、「国際社会でロシアだけが事実に目と耳を塞いでいる」という論評を発表した。
ロシアの分析能力は世界有数のはずだ。しかも北朝鮮は友好国だ。
なぜなのか。おそらくロシアは「北朝鮮は米国が引いたレッドライン(超えてはいけない一線)を超えていない。米国の武力行使は認められない」と主張したいのだろう。それが、関係国外交官らの受け止めだ。
ロシアにとって、情報の価値は真偽にはない。自国の立場を有利にするための武器に使えるかどうかだ。そう思わせる例は、枚挙にいとまがない。
ロシア対外情報庁(SVR)は6月下旬、不思議な文書を公式サイトに掲載した。「SVRの非合法諜報局は6月28日に、95周年を祝う」と書いてある。
SVRは、旧ソ連の国家保安委員会(KGB)の後継組織の一つだ。だがSVRが公開している組織図には「非合法諜報局」など存在していない。広報部門に電話で聞いた。「組織図に無い『非合法諜報局』があると理解してよいのか」
「もちろんです」。意外にもあっさりと認めた。
KGB出身のプーチン大統領は式典で、名前や国籍を偽って外国で活動する「イリーガル」と呼ばれる非合法スパイが集める情報を日常的に得ていることを公言。「非合法諜報のような強力な特務機関を持つ国は少ない」と胸を張った。
多くの国がスパイ活動を行って…