マティス米国防長官と宋永武(ソンヨンム)韓国国防相は30日、ワシントン郊外の米国防総省で会談し、北朝鮮問題の外交的な解決を支持する立場で一致した。マティス氏は会談前、記者団に対して「我々は外交的解決を決してやめていない」と述べ、北朝鮮への制裁強化をすることで圧力を強めていく考えを示した。
トランプ大統領が同日、自身のツイッターで、北朝鮮との対話は「解決策ではない」と、外交ではなく軍事力を含めた強硬手段をとる考えを示唆。米軍を統括するマティス氏がこれを打ち消し、交渉による解決を目指す米政府の姿勢を改めて強調した。
韓国側の説明によれば、マクマスター米大統領補佐官(国家安全保障担当)も同日、宋氏と会談した際に「米国は北朝鮮問題の平和的解決を優先する」と語ったという。
一方、韓国側は米韓国防会談で、米軍の戦略爆撃機や原子力潜水艦などの戦術兵器を韓国に常時ないしローテーション配備するよう要請した。宋氏はその際、米軍戦術核の再配備を求める声が韓国内で高まっていることに言及した。
米国は1991年、当時の盧泰愚(ノテウ)・韓国大統領が朝鮮半島の非核化を宣言したことを受け、在韓米軍の戦術核を完全に撤去したとされる。宋氏は韓国内の意を紹介する形を取ったが、公式の会談で提起したことで、日本を含む東アジア地域に影響が出そうだ。
米韓は韓国独自の弾道ミサイルについて、弾頭重量500キロの制限を緩和する方向で一致した。北朝鮮の地下施設への攻撃能力を強化するとしている。韓国側は独自の原子力潜水艦を建造したい意向も示した。米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD(サード))の韓国への暫定配備を早期に完了することでも一致した。
マティス氏は会談前、北朝鮮による挑発行為を抑えるため、「両国の防衛協力がかつてなく重要になっている」と強調した。米国は「韓国が最前線にいることを強く認識しており、これについて無関心ではいられない」とも指摘。米軍が北朝鮮への軍事行動に踏み切った際の報復攻撃を懸念する韓国の立場に理解を示した。
北朝鮮が9月9日の建国記念日に向け、予告している米領グアム周辺への弾道ミサイル発射などの新たな挑発行為に出る懸念が強まっている。(ワシントン=峯村健司、ソウル=牧野愛博)