山梨県山梨市の職員採用に絡む贈収賄事件で東京地検は11日、前市長の望月清賢(せいき)容疑者(70)を受託収賄罪で追起訴し、発表した。供述などから、採用依頼の見返りとして賄賂を受けたことが立証可能と判断した。また同市元収入役で住職の滝沢博道(はくどう、73)、採用試験の受験者の父親で元中学校長の萩原英男(57)の両容疑者についても贈賄罪で起訴した。
発表によると、望月容疑者は2月8日に山梨市内の自宅で、滝沢、萩原の両容疑者から補欠合格した受験者を採用するよう頼まれ、謝礼として80万円を受け取ったとされる。
同市の採用試験を巡っては、受験者の関係者から他にも働きかけがあったと市議や元市幹部が朝日新聞の取材に証言している。
現職市議の1人は今年3月、男性受験者の親族から知人を介して依頼を受け、男性の採用可否を公表前に市幹部に確認したと認めた。市議は「合格させてと頼んだ訳ではない」。金銭授受は否定した。また市の元幹部は2014、15年度の採用試験時、望月容疑者から数人の受験者について「入れてもらえないか」などと優遇するよう依頼されたという。実際に優遇したかどうかは「よくわからない」と答えた。
望月容疑者は、特定の受験者の点数を水増ししたとして、今年8月に虚偽有印公文書作成・同行使の罪で起訴されている。
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受託収賄罪で起訴された前山梨市長の望月清賢容疑者(70)が県議だった2012年度に印刷代として政務活動費から支出した42万円について、不正請求の疑いがあることがわかった。印刷代の領収書を発行した業者が「実際には刷っていない」と証言した。
政務活動費収支報告書には、12年11月13日付で議会報告1万3千部の印刷代として県内の印刷業者の42万円の領収書が添付されている。しかし、この業者は取材に対し、望月容疑者の元妻の治美被告(61)=詐欺罪で起訴=から「領収書がほしい」と依頼された、と話した。お金を預かってゲラなどは作ったが、実際には印刷せず三十数万円は年末に返したという。治美被告から金額を水増しした領収書を求められることもあったという。望月容疑者の弁護士は取材に応じていない。