アドリアナちゃん(左)。実母がホームレスだったことや保護された経緯を幼い頃から包み隠さず教えられてきた=米ロサンゼルス郡、大久保真紀撮影
■小さないのち みんなで守る
米ロサンゼルス郡に住むジル・バードウェルさん(49)には3人の子どもがいる。長女と次女は養子、長男は実子だ。ホームレスの女性が産んだ次女は、カリフォルニア州の「赤ちゃん安全保護法」にもとづき保護され、託された。幼いころからそうした経緯を包み隠さず語ってきた。
特集:小さないのち
おなかの大きなホームレスの女性が病院に飛び込んで来て、出産した。「食べるものにも困っている。とても育てられない」。そう言って、匿名で預けられる「赤ちゃん安全保護法」に基づき、生まれたばかりの赤ちゃんを病院に預けた。
連絡を受けた米国ロサンゼルス郡ロングビーチ市に住むダレン・バードウェルさん(51)と妻のジルさん(49)は迷いなく、引き取ることを決めた。
2人はその赤ちゃんに、アドリアナという名前をつけた。当初は、体重が2千グラムちょっとしかなかった。「本当に小さくて……。でも、とてもかわいかったのよ」とジルさん。
出会った晩は、病院で付き添い、一緒に帰宅した。
最初はよく泣いた。ミルクを飲むと、おなかが痛くなるようだった。専門医に診てもらい、ミルクを変えたり、授乳前に薬をあげたりしたが、よくならない。胃の手術が必要かもと考えたが、1歳のころ粉ミルクから牛乳に変えたところ、何の問題もなくなった。
アドリアナちゃん(8)はその頃から、夜通し眠るようになり、体重もどんどん増えていった。
いまはぱっちりとした目をした女の子に成長し、小学3年生になった。算数が大好きで、将来は学校の先生になるのが夢だ。
アドリアナちゃんには、姉のオリビアちゃん(10)と弟のタナー君(7)がいる。
建築関係の仕事に就くダレンさんと、大学で事務職をしているジルさんは2004年に結婚。ジルさんは3回の流産を経験し、養子を迎えようと、行政に登録した。週2回の研修を半年近く受け、自宅の調査なども受けて養子を引き取る資格があると認定された。
2人のもとにまずやって来たのが、オリビアちゃんだ。通常の養子縁組の手続きで、生後1カ月から育てた。そのオリビアちゃんが2歳になるころ、生後3日のアドリアナちゃんを引き取った。
ジルさんは自分の子どもはあきらめていたが、アドリアナちゃんを引き取ってからすぐ妊娠。まもなくタナー君を産んだ。
「神様が2人の女の子を私たちに遣わして、2人の女の子が息子を連れてきてくれた。養子の2人と実子の息子は何も変わらない。3人とも私の子ども」とジルさん。
ジルさんがタナー君を産んでから、4歳になったオリビアちゃんがジルさんにこう聞いてきた。
「私はお母さんのおなかから出てきたの?」
そうではないことを伝えると、…