記者会見で、臨時国会冒頭での衆院解散を表明する安倍晋三首相=25日午後6時10分、首相官邸、岩下毅撮影
安倍晋三首相は25日の記者会見で、28日召集の臨時国会の冒頭で衆院を解散すると表明した。消費税率を10%に引き上げる際の増税分の使い道を変更し、2兆円規模の政策財源に充てる決断について「国民に信を問う」とした。一方、小池百合子・東京都知事は新党「希望の党」を設立し、代表に就くと表明。与野党から参加の動きが出ており、流動化の中で選挙戦に突入する。衆院選は10月10日公示、22日投開票となる。
特集:衆院、解散・総選挙へ
安倍首相は会見で「税こそ民主主義で、国民生活に大きな影響を与える。使い道を見直す大きな決断をする以上、国民に信を問わなければならない」と強調。消費増税の先送りを理由に2014年11月に解散した際と同様の論理構成で、解散する理由を説明した。
19年10月に消費税率を10%に上げた際の増収分のうち4兆円程度は「借金の穴埋め」に充て、残り1兆円程度で社会保障を充実する予定だった。首相はその使途を変更し、20年度までに3~5歳の幼稚園や保育所の費用を無償化。2歳児以下も所得が低い世帯は無償化することなどに2兆円程度をあてる考えを示した。
使途変更に伴い、財政再建に向けた政府の取り組みは大きく後退する。「基礎的財政収支」を20年度に黒字化するという政府目標について首相は「達成は困難となる」と認めた。
首相は解散理由の一つとして、北朝鮮情勢にも言及。「民主主義の原点である選挙が北朝鮮の脅かしに左右されることがあってはならない。むしろ選挙を行うことで北朝鮮問題への対応について国民に問いたい」とした。さらに少子高齢化と北朝鮮情勢を「国難」と位置づけ、今回の解散を「国難突破解散だ」と名付けた。
野党4党が憲法の規定に基づき臨時国会召集を求めるなか、召集を引き延ばし、国会で一切審議しないまま冒頭で解散することになる。この点について問われた首相は「憲法上、問題ないと考えている」と答えた。そのうえで、森友・加計(かけ)学園問題について「選挙戦でも野党の皆さんの批判は集中するかもしれない。本当に厳しい選挙となる。覚悟している」と述べた。
勝敗ラインは「目標は常に与党で過半数。(自公両党で)233議席以上」と設定。憲法改正については会見で触れなかったが、夜に出演したNHK番組で自民党公約について「自衛隊の存在を明記することに向けて議論が進む」と語った。