大分県竹田市の県立竹田高校で2009年、剣道部の工藤剣太さん(当時17)が練習中に熱射病で死亡した事故を巡り、県が負担した賠償金2755万円を当時の顧問や副顧問に請求するよう、両親が県に求めた訴訟の控訴審判決が2日、福岡高裁であった。佐藤明裁判長は、元顧問に100万円を負担させるよう県に命じた一審・大分地裁判決を支持し、県側の控訴を棄却した。
争点は、元顧問らに重大な過失があったかどうかだった。県側は「熱射病が原因で意識障害になったか疑問。仮にそうだとしても、元顧問は、剣太さんが死に至るような熱射病になっていたとは認識できなかった」などと主張していた。
高裁判決は、剣太さんが練習中に竹刀を払い落とされたにもかかわらず、竹刀を持たずに構えをとり、注意されても気づかなかったなどと指摘。熱射病による意識障害を疑うべき状況だったとして、「死に至ることを予見することができたのに、演技だと決めつけて指導を続けており、重大な過失がある」と判断した。
一方、「元副顧問にも負担させるべきだ」などとする両親側の付帯控訴も棄却した。
判決後、両親らが福岡市内で報告集会を開いた。
原告弁護団の徳田靖之弁護士は「今後の部活動指導にあるべき基準をもたらし、大きな意味があると思う」と評価した。
母の奈美さん(48)は「教師個人の責任が認められたことで、今後、行き過ぎた指導の抑止力となってくれれば。剣太も合格点を出してくれるのではないか」と語った。
大分県教委の工藤利明教育長は「一審に続き厳しい判決。十分に検討し対応を判断したい」と話した。(興野優平、加藤美帆)