吉田徹・北海道大学教授
議員とは何か。そんな再考を促す異色の提言が、論壇で政治学者から投げかけられた。吉田徹・北海道大学教授(比較政治)による「くじ引き民主主義」の勧めだ。足元で進む「選挙の空洞化」を直視し、歴史に手がかりを探っている。衆院選を前に話を聞いた。
吉田さんは今年8月、ウェブマガジンのαシノドスに「形骸化する地方自治――『くじ引き民主主義』を導入せよ!」を寄稿した。
選挙ではなく、くじ引きで自分たちの代表を決める仕組み。それを導入することで私たちは民主主義を強化できる、と吉田さんは訴えた。古代ギリシャなど近代以前の民主政治では、実はくじ引きが普通に用いられていたのだ、とも。「地域の名士だけでなく、専業主婦だったおばあちゃん、子育てするお母さん、非正規のフリーターが集まる議会を想像してみよう」と論考に書いた。
引き金は地方選挙の「形骸化」だった。2015年に行われた統一地方選挙では、町村議選での無投票当選者の割合が21%に増えた。投票の洗礼を受けずに議員になる例が常態化しつつあるのだ。また、議員のなり手不足に苦しむ高知県大川村は今年、議会を廃止して代わりに有権者が直接審議する「町村総会」の設置を検討し始め、全国に衝撃を与えた(後に作業を中断)。
いま地方選挙の現場で目撃されているのは「選ぶという行為の空洞化」だと、吉田さんは話す。「選択肢がない状態では、選ぶという行為は意味を失う」
しかし、職業政治家だけでなく…