借金して宅地を造り、売った収益で返済――。そんな自治体の特別会計に巨額の損失が潜んでいる。「宅地造成事業」を巡る特別会計447のうち、57で借金額が時価より多い「債務超過」と言える状態だった。超過総額は3200億円以上(2015年度末時点)。朝日新聞が総務省の内部文書を入手し、分析した。
宅地造成、先送りのツケ 大阪市、損失2千億円の事業も
宅地造成事業用の特別会計は1959年度に起源となる仕組みができた。取得した土地が塩漬けのまま利払いが膨らみ、近年は「第2の土地開発公社」と呼ばれることもある。
06年度に財政破綻(はたん)した北海道夕張市は特別会計などを使い、借金を膨らませていた。国はこの教訓を受けて09年度、宅地造成事業をする特別会計の土地についても、「時価評価相当額」を算出するよう各自治体に求めていた。
15年度末時点の時価評価相当額と借金額について、総務省のデータによると、現存する447特別会計のうち、31道府県の52自治体が持つ57特別会計で借金額が土地の評価額を上回り、その差額は3220億円に上っていた。借金返済に回せる資産や収入が見込めるケースもあるが、土地の値段が下がったり売れなかったりすれば、さらに損失が膨らみ、公金での穴埋めになる恐れも高い。
国の有識者会議は今年、この問題に関してまとめた報告書で、宅地造成は経営状況が悪い事業が多いと明記。人口や土地需要の減少で地価下落の恐れがあるとして「用地売却の見込みが立たない場合は先送りせず、事業廃止を検討する必要がある」と指摘した。国は20年度までに、事業の継続や廃止までの道筋をまとめた経営戦略を作るよう、求めている。(赤井陽介)