現在の法科大学院と予定されている改革
文部科学省は、法科大学院の入学者の3割以上を、法学部などを卒業していない「未修者」とする基準を撤廃する方針を決めた。各大学院の2019年度入試から適用される。法科大学院の志願者が減るなか、3割を確保するために水準の低い学生を入学させていることが、司法試験の合格率低下につながっているという指摘もあり、方針を転換する。
法科大学院は「社会人など多様な人材を法曹に呼び込み、質・量ともに豊かな法律家を育てる」という司法制度改革の理念を受けて、04年度に始まった。こうした多様な人材を集めるため、文科省は03年に「未修者を入学者の3割以上とする」と告示した。
だが、法科大学院を修了した人の司法試験合格率は当初想定された7、8割に遠く及ばず、最近は2割台と低迷。特に未修者コースは、標準の3年で修了できる人が約半数にとどまり、今年の司法試験合格率は約12%だった。このため未修者の志願者が激減し、「3割以上」が大学院の実態にあわなくなっていた。
中央教育審議会はこの春から、法科大学院を扱う特別委員会などで、こうした問題について検討。22日の特別委で文科省が「3割」の基準を撤廃する方針を示し、おおむね了承された。ただ、「多様な人材の確保は維持すべきだ」との意見も出ており、文科省は各大学院に対し、優秀な未修者を集める努力の継続を求める。担当者は「未修者の質を確保し、司法試験の合格率上昇につなげたい。多様な人材を法曹界に送り出す、司法制度改革の理念に基づく対応だ」と話す。
文科省は法学部を卒業した「既修者」の志願者数の減少にも対応しようと、法学部と法科大学院を計5年で修了する「法曹コース」(仮称)も導入する方針だ。現在は法学部で4年、大学院で2年学ぶ形が一般的だが、時間的・経済的な負担が大きく、法科大学院を修了しなくても司法試験の受験資格を得られる「予備試験」に流れる学生も増えている。
現在も、飛び入学制度などがある大学では法学部で3年学んでから法科大学院に進む人がいるが、「きわめて優秀な学生」による例外的なケースという。法曹コースでは、法科大学院と連携する法学部が、3年で卒業することを前提としたカリキュラムを作れるようにする。(増谷文生)
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〈法科大学院〉 法曹人口の増加などを柱とした司法制度改革の一環で、修了すると司法試験を受験できる大学院として2004年度に始まった。法学部などで法学を学んだ人は「既修者コース」(2年)へ進むことができ、社会人らを受け入れる「未修者コース」(3年)もある。当初は修了者の7、8割が司法試験に合格すると想定されていたが、最近の合格率は2割台となっている。