ドイツで、フランスで。今年、既存の政治に失望して漂う票が、極端な政治主張やイメージ優先の即席政党に風を吹かせ、棄権や白票に向かった。選挙が世論の分断をあぶり出す構図は、昨年11月の大統領選でトランプ氏を勝利させた米国だけに限らない。その芽は、日本にも潜んでいるようにみえる。
特集:分断世界
ドイツ 右翼政党躍進
与党が順当に勝つ選挙になると予想されていた。そのドイツで波乱が起きた。
9月の連邦議会選挙。メルケル首相が率いる中道右派、キリスト教民主・社会同盟(同盟)は第1党の座は保ったが、議席を大きく減らした。連立交渉は難航。交渉がまとまらず再選挙になれば、西独時代も通じて戦後初の異常事態だ。
メルケル氏の足をすくったのは、新興右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」。メルケル氏の難民受け入れ策に反旗を翻した。「ネオナチ」と海外メディアに危険視されながら、約13%の票を獲得。戦後ドイツで、右翼政党として初めて国政に進出し、いきなり第3党に。709議席中94議席と、他党が軽視できない存在感を示した。
メルケル氏が遊説に行く先々で、AfD支持者は彼女に抗議の声を浴びせた。「やめろ、やめろ」「私たちのリーダーではない」。失業率が比較的高い地域で、それは顕著だった。ドイツの選挙で、かつて見たことのない光景だった。
ただAfDに投票した人が、みな極右的な主張に賛同しているわけではない。
「私は決して人種差別主義者ではない」。AfDに投票した西部ゲルゼンキルヒェンに住むエンジニアのウド・ロビツキさん(65)は言った。
半世紀近く、中道左派の社会民主党(SPD)を支持してきた。SPDは、同盟と並ぶ2大政党としてドイツ政治の主役を担ってきた。だが2005年から2度、同盟と連立政権を組んで違いが見えなくなった。AfDへの投票は、弱者の味方でなくなったSPDへの「罰」だった。
北部シュトラールズントでイベント会社を営むイェンス・キューネルさん(41)は、メルケル政権がユーロ危機や難民受け入れで他国の人のためにお金を使うのが疑問だった。批判を票に込めた。「経済目的の難民に反対なだけで、政治難民は歓迎だ。私は決して右翼ではない」
独公共放送ARDによると、A…