女子500メートルで日本新記録で優勝した小平奈緒=AP
スピードスケートのW杯カルガリー大会で日本新で優勝した小平奈緒は、夜中に2度、目が覚めた。前日の1000メートルは1周目で転倒。200メートルのタイムは自己最速だっただけに「ゴールまで滑り切ったらどんなタイムが出ていたかと思うと悔しくて。沸々とするものがあった」。
小平、500m日本新で13連勝 スピードスケートW杯
この日の女子500メートル。わき上がる思いを、自らの滑りに込めた。
最初の100メートルを10秒19で通過。この地であった今年2月の世界スプリントより0秒18速い。そのまま加速を続けながら、転倒した第1カーブに突入。「滑りをもっと安定させようと徹底的に修正した。スポーツカーのように」。重心を低く保って、そのままカーブを回りきった。
小平にとって転倒は珍しくない。ソチ五輪前年の13年はここカルガリーのW杯500メートルで転んだ。翌週の世界スプリント選手権(米・ソルトレーク)1000メートルでも。小平にとって、より速いスピードに挑むことと転倒は、表裏一体だ。
大きな遠心力がかかるカーブでは、それに耐えるためにブレード(刃)をより傾けて氷を押さなければならない。高速リンクではさらに遠心力は強くなる。「その力を押し返してスピードが出る。それは望むところ」と結城コーチ。「誰も経験したことのないスピード」を求めて氷を長く押すための挑戦が、1000メートルでは転倒という形になって表れた。
この日、最終カーブこそリスクを避けるために、少し外側を回ったが、自身が持つ日本記録を0秒22更新する36秒53でゴール。「氷からの力をうまく押さえられた」と達成感をにじませた。
転んだだけ強くなる小平。次週、世界最速リンクの米ソルトレークシティーで、36秒36の世界記録に挑む。(榊原一生)