柴田百恵さん
ボートレーサー 柴田百恵さん(18)
身長154センチの体をボートに隠して抵抗を減らし、時速約80キロで直線を突っ走る。ターンでは腰を浮かし、先行するボートを抜こうと狙い続けた。
津市のボートレース場で11月にあったデビュー戦。「柴田百恵」の横断幕が飾られる中、1周600メートルの競走水面を3周した。結果は6艇中6位。「緊張で頭が真っ白。どう走ったか覚えていません」。プロの洗礼に悔しさが募った。
全国に約1600人いる選手の中で最年少。9月に17歳でプロのボートレーサーになったばかりだ。あどけなさが残る表情には似合わない、厳しい勝負の世界に飛び込んだ。
幼い頃から、浜松市北区の実家の近くにあるボートレース浜名湖に父と遊びに来ていた。父の勧めで興味を持ったのは中学3年の時。吹奏楽部に所属し、運動も得意と言えるほどではなかったが、女性ボートレーサーの活躍を見て、「かっこいい」と心を奪われた。
倍率36倍の養成所入所試験を突破すると高校は2年で中退。福岡県柳川市の養成所で1年間、操縦や整備を学んだ。午前6時起床、相部屋、携帯電話は持ち込み禁止……。分刻みの厳しい規律の中で心も鍛えた。
プロとして賞金を競うが、実力が伴うまでは、ひと月に10日ほどしか出走できない。津では、その後も6位が続いた。
いま、先行するボートの水しぶきを受けながら、勝敗を左右するターンの技を磨いている。「最年少といっても、勝負では同じ土俵に立つ。思い切り臨みたい」。座右の銘は「泣いた分だけ笑えばいい」。戦いは始まったばかりだ。(張春穎)