北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は1日、米本土を攻撃できる核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実戦配備を宣言した。2月9日に開幕する平昌(ピョンチャン)冬季五輪への代表団派遣のため、韓国側と協議する考えも表明し、米韓同盟の弱体化を狙う戦略を浮き彫りにした。
金正恩氏、米本土攻撃可能なICBMの実戦配備を宣言
正恩氏は1日午前9時(日本時間同9時半)から約30分間、朝鮮中央テレビで新年の辞を発表したなかで語った。米国内で北朝鮮に対する軍事力行使を求める声が強まりそうだ。韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は平昌五輪を南北対話の契機としたい考えで、国際協力の足並みが乱れる可能性がある。
正恩氏は新年辞で、2017年にICBMなどの実験が成功裏に終わったと説明した。「いかなる力でも覆せない信頼できる戦争抑止力を保有している」と指摘。「米国は決して我が国を相手に戦争を仕掛けられない」とした。
そのうえで「米本土の全域は我々の核打撃射程圏にある。核のボタンは、常に私の事務室の机の上にある。脅しではなく現実だということを、素直に理解しなければならない」と強調した。
正恩氏の発言は、昨年11月29日に試射したICBM「火星(ファソン)15」(射程1万3千キロ以上)に核弾頭を搭載して実戦配備したことを指すとみられる。
正恩氏は核兵器やミサイルの大量生産や実戦配備を急ぐよう指示。「核反撃体制を常に維持すべきだ」と述べ、核を搭載した潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)の整備にも意欲を示した。核・ミサイル開発のモラトリアム(停止)は宣言しなかった。
一方、韓国で2月9日に開幕する平昌冬季五輪について「民族の地位を高める。この大会の成功を心から望む。代表団の派遣も十分に可能だ」と述べた。この問題を協議するため、南北朝鮮が早期に会う必要性があると強調した。
正恩氏は同時に韓国に対して「北侵核戦争の策動に加担せず、緊張緩和のための我々の努力に誠意を持って対応すべきだ」と主張。韓国を米国から引きはがし、米韓同盟を弱体化させる意図を明確にした。「外部勢力との核戦争演習はやめるべきだ」と述べ、米韓合同軍事演習の中止も要求した。
正恩氏は13年から毎年1月1日に新年の北朝鮮の施政方針を肉声で発表してきた。今回の新年辞では、日本に対する言及はなかった。(ソウル=牧野愛博)