ロシア・モスクワ郊外で11日午後に起きた同国国内線サラトフ航空機の墜落で、ロシア非常事態省は同日、乗客・乗員71人全員が死亡したと発表した。航空当局は原因調査に乗り出した。
モスクワ郊外で旅客機墜落 71人搭乗、生存は絶望的か
同航空は乗客65人と乗員6人の名簿を公表。5歳の女の子を含む3人が未成年で、それぞれスイスとアゼルバイジャンの外国籍の乗客が2人いた。
墜落現場では半径1キロほどの雪原に機体の残骸が散乱しており、遺体の収容と同時に、フライトレコーダーのうちまだ見つかっていないボイスレコーダーの捜索が続いている。
インタファクス通信によると、墜落機は1月にエンジン・ユニットや翼の状況を調べる技術検査を受けたばかりだった。タス通信によると、2010年に就航し、他の航空会社を経て1年前からサラトフ航空で使われていたという。
墜落したのは、ロシア製のアントノフ148型機。ウクライナのアントノフ社が開発し、中距離旅客機として2004年に製造を開始した機種だ。サラトフ航空によると、機長は総飛行時間5千時間で、うち2800時間が同型機での飛行だったという。
離陸直後、空港から約35キロの地点で墜落した。機長は離陸後、管制官に機体の不調や緊急着陸の要請などの連絡をしておらず、大統領直属の捜査委員会報道官はロシア通信に「天候状況、人為的要素や機体の問題などあらゆる可能性を前提に捜査する」と語った。
「機体はバラバラになって落ちてきた」との目撃証言もある。
フライトレコーダーのうち、10日夕までに操縦の記録をとどめたフライトデータレコーダーが墜落現場から回収された。同日夜、ドモジェドモ空港で記者会見したソコロフ運輸相は機長らの会話を記録したボイスレコーダーの回収を原因調査の課題に挙げた。
ペスコフ大統領報道官は、プーチン大統領が事故対応の指揮に当たるため、12日の南部ソチへの出張を取りやめたと語った。ソチで予定されていたパレスチナ自治政府のアッバス議長との会談はモスクワで行われるという。(モスクワ=喜田尚)