3Dプリンターで復元された「懸守」の内部に納められていた極小の仏像=京都市東山区、佐藤慈子撮影
大阪市天王寺区の四天王寺に伝わる平安時代後期の国宝のお守り「懸守(かけまもり)」について、X線CTスキャナーで内部を調査した結果、高さ3・3センチの仏像が納められていることがわかった。京都国立博物館(京都市)が9日発表した。これまでも納入品の存在は知られていたが、具体的な姿が確認されたのは初めて。
懸守は木製の芯を錦や金工品で飾ったお守りで、首にかけて用いる。国内では四天王寺が所蔵する7点と、熊野速玉大社所蔵の1点の計8点が現存する。四天王寺の懸守は錦の織りの構造などから、平安後期に高貴な人物により奉納された物と考えられている。
昨秋の国宝展をきっかけに、同博物館が四天王寺の7点をCTスキャン調査したところ、桜の花びらをかたどった懸守(高さ6・4センチ、幅7・3センチ)の内部に、仏像と容器が一体となった円筒形の容器「仏龕(ぶつがん)」(高さ約5・5センチ)が納められていることが確認された。仏龕は2分割でき、片方は高さ3・3センチの如来立像が細密に彫られ、もう一方は三脚卓の上に香炉や花を飾る華瓶(けびょう)も彫られていた。
四天王寺の一本(いちもと)崇之学芸員によると、仏龕は香木の白檀(びゃくだん)製で、仏像は阿弥陀如来とみられ、平安時代にお守りの中に仏像を込めて携帯したことを示す初のケースという。「細部まで手を抜かずに極めて精巧につくられ、阿弥陀如来へのあつい帰依の心がうかがわれる」と話す。
懸守は、同博物館が3Dプリンターで制作した仏龕の再現品とともに、4月21日~5月6日、四天王寺内の宝物館で公開される。(久保智祥)