開幕3連勝に導いたJ2山口の霜田監督
開幕したばかりのサッカーJ2で、首位に立つのが山口だ。開幕3連勝。昨季20位に沈んだ地方クラブを率いるのは、日本協会前技術委員長で、欧州での指導経験もある霜田正浩監督(51)。ベルギー流の指導法を軸に、若手らの潜在能力を引き出している。
3試合で10得点
11日の敵地・栃木戦は、山口が5ゴールを挙げて快勝した。逆襲にセットプレー、相手のミスを突いたと思えば、パスワークにPKと、実に攻めは多彩。開幕から3試合で計10得点を挙げたチームに、霜田監督は「課題はまだまだあるが、点を取るスポーツである以上たくさん点を取れたのは前向きな材料」。
今季就任した霜田監督は、日本協会で代表の強化を務め、ザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチの歴代日本代表監督を招いた。技術委員長を2016年末で退いた後は、昨夏からベルギー1部シントトロイデンでセカンドチームのコーチを務めた。サッカーの本場で若手と向き合った経験が糧になっている。
潜在能力の引き出し方
ひとつが個の力を伸ばす指導だ。山口は今季、能力はあるのに発揮しきれず伸び悩んでいた若手を多く獲得した。「ここが足りないという減点法でなく、良いところに目を向ける加点法で評価する」との視点で、彼らをよみがえらせた。
成長株が、開幕から3戦連発計4得点のFWオナイウ(22)だ。昨季所属したJ1浦和ではリーグ戦わずか1試合の出場。ただ身体能力は抜群で、年代別の日本代表歴もある。オナイウは「試合に出れば点を取れるとずっと思っていた。信頼に応え続けたい」。J2東京ヴから加わったFW高木(22)も、「みんなが伸び伸びプレーできていることが一番」と好発進の要因を分析する。
いいとこどりの発想
もうひとつ、霜田監督が選手に求めるのは強い自己主張だ。多民族が入り交じり、若くしてふるいにかけられるベルギーで、選手は自分の要求をためらわず周囲に伝え、納得できなければ指導者にも言い返していた。同時に、日本が優れている点も発見した。「味方を助ける献身性、コンビネーションの力は日本が上」
だから、ベルギーと日本のいいところ取りをしようという発想になった。選手には、指示を待つなと伝えている。オナイウは「僕ら若手も以前からクラブにいるベテランの人も、みんながコミュニケーションを取れている」。試合中のピッチでは、選手同士が頻繁に言葉を交わす。普段のミーティングも、選手の発言が活発だという。
今後も上位を走れば、対戦相手からの研究も進んでくる。霜田監督は「相手が何か対策をしたら、その裏を突く。それがサッカー」と話す。たくましく、かつ柔軟に戦えるチームを目指している。(藤木健)