真剣な表情で試合を見る多田歩矢君=18日、兵庫県西宮市
第90回記念選抜高校野球大会(日本高野連、毎日新聞社主催、朝日新聞社後援)に出場する由利工(秋田県由利本荘市)には、頼れる「参謀」がいる。チーム唯一のマネジャー、多田歩矢(ふみや)君(3年)だ。甲子園では記録員としてベンチ入りする。「勝利に向けて自分の役割を全うしたい」と意気込んでいる。
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「ボール球を振っている。追い込まれる前に打たないと」。18日に兵庫県西宮市で行われた早稲田実(東京)との練習試合に完敗後、多田君が選手に呼びかけた。直後の報徳学園(兵庫)戦では、助言のかいあって打線がつながり、快勝。本塁打を含む2安打3打点を記録した土井幹太選手(3年)は「低めの変化球の見極めなど、チーム全体で意識できた」と話した。
多田君は昨秋、部長から突然、マネジャーへの就任を打診された。小学3年のときに野球を始め、選手として甲子園をめざしていたところだった。
とにかく迷った。でも、引退した2人の先輩マネジャーは、打撃投手などを務めながらチームを支えてくれた。その姿を「格好いい」と思っていた。両親の後押しもあって、引き受けると決めた。
「選手のときは自分のことしか見られなかった。今はチームに積極的に関われている」と実感する。試合中はスコアブックを付けながら、打撃の調子の悪い選手には「落ち着いていこう」と声をかけ、味方投手の投球について「変化球が多めになっている」と捕手に配球を助言する。
同じ象潟中(にかほ市)出身の畑山陸翔(りくと)主将(3年)は「選手同士で気付かない視点で、試合や練習を見てくれる」と信頼を寄せる。
きちょうめんな性格が持ち味。ホテル暮らしの選手の体重を毎朝記録し、減っている選手には声をかける。全員が「ノルマ」のご飯を2杯食べているか目も光らせている。「(24日の)初戦は午前9時開始と朝が早いので、しっかりサポートします」。憧れの夢舞台へ、多田君は力強く話した。(神野勇人)