遠藤(右)は千代丸を引き落としで破る=小林一茂撮影
(23日、大相撲春場所13日目)
相撲特集:どすこいタイムズ
春の大一番はわずか1秒1。経験で勝る横綱に軍配が上がった。
1敗の鶴竜と2敗の魁聖。重圧がかかったのは優勝争いに慣れない魁聖だった。立ち合い、194センチをかがめて前に出たが、あまりに低い。「よく体が反応した」と語るのは横綱。さっと体を引きながらのはたき。目標を失った205キロの巨体はつんのめり、両手がばったり土俵についた。
鶴竜にとっては悪夢を振り払う一番だった。前日、栃ノ心の怪力に屈して連勝が止まった。嫌でも脳裏をかすめたのが先場所、初日から10連勝した後に4連敗した大失速だろう。「いつもより早く寝た。また初日のつもりでいこうと」
魁聖とは過去11戦全勝と圧倒していたが、8場所ぶりの対戦。2009年に新三役になったころからつけているメモを見返して入念に対策を練った。その上でついてきた結果に、「切り替えができた」とうなずいた。
追う力士に2差をつけての残り2日。八角理事長(元横綱北勝海)は「決めるなら明日。あさってになるとプレッシャーがかかる」とみる。当の本人は「平常心。自然体で」と表情を崩さない。
16年九州場所の優勝の後、4場所連続休場で現役生活の瀬戸際に追い込まれた。再起をかけた初場所は屈辱的な逆転を許した。1年4カ月の苦しみを糧に、4度目の賜杯(しはい)を抱けるか。あと1勝だ。(岩佐友)
○遠藤 4度目の前頭筆頭で、初の勝ち越し。新三役が近づく白星ですね、との問いかけに「とくに……。いつもの勝ち越しと一緒です」。
●千代丸 遠藤に苦杯。「全部上ずっぱりでした。中途半端な引きしちゃったな……」
○松鳳山 右で張って両差しに成功。逸ノ城を電車道で運んだ。「最後の仕切りのとき、『一発入れてやったらアワ食うんじゃないか』と思ったんで」
●栃ノ心 横綱撃破の翌日に平幕に敗れ、「あー、もういいか」「結局負けたらアカンよ」。前向きな言葉は一切なし。
●豪栄道 大関対決ではたき込まれ、「あと一歩が出なかったですね」。14日目は鶴竜戦。「俺が負けたら優勝決まる。意地見せたいですね」
●魁聖 立ち合いで当たってから足が出ず、バッタリ。初の金星はならず。「気合入れすぎるとすべっちゃう。俺らしい」
○高安 大関対決を制したが、引いてしまった相撲内容に不満の様子。取り口への質問には答えず、優勝争いについて「気楽にやります」。
○正代 前日に鶴竜を破った栃ノ心に黒星をつけ、「自信につながりますね」とニッコリ。
○旭大星 来場所の新入幕をほぼ確実にし、「ほっとしました。長かった」。北海道出身の幕内力士となれば20年ぶり。