試合前、アルプススタンドに向かって一礼する記録員の島内=27日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場、遠藤真梨撮影
(27日、選抜高校野球 明秀日立10―1高知)
主将の捕手けが、メモ託され急きょ代役 高知の中畑
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本来なら捕手として夢の舞台に立っているはずだった。27日、高知は明秀日立(茨城)との初戦を迎えたが、ユニホームを着て記録員としてベンチ入りした高知の島内(しまのうち)優成君(3年)の左足にはギプスがあった。
正捕手、主将として、チームを率いてきた。だが、2週間前の練習試合で三塁に滑り込んだ際に左足首を骨折し、全治2カ月。悔しさとつらさで涙が流れた。
島田達二監督(45)は「この時期のけがでかわいそうだが、チームを引っ張ってきた存在ということは変わらない」と、それでも信頼を寄せた。島内君自身も「引きずってはだめだ。前向きにとらえよう」と考えた。島田監督には「プレーできるやつに背番号をあげてください」と頼んだ。
16日の抽選会は副主将でエースの中屋友那君(3年)が代わりにくじをひいた。小学6年からバッテリーを組んできた仲だ。心配しそうな中屋君に「キャッチャーのことは俺に任しとけ」と伝えた。
実は明秀日立戦に向け、急きょ捕手として代わりに出た2人に渡していたものがあった。「自分にできることをしよう」と考え、投手陣の得意な球や性格、声のかけ方などをA4用紙5枚ほどに書き出した資料だ。
選手たちは口々に「島内の分まで自分がしっかりやりたい」と語って、甲子園のグラウンドに駆け出していった。
「ベンチからチームを鼓舞しよう」。島内君は声を張り上げた。ただ、苦戦するチームの姿に、ふと「自分が出ちょったら」と悔しさもこみ上げた。
投手2人が投げたが、制球の乱れもあって結果は9点差で敗北。ベンチ前で相手の校歌を聴いた。島内君は誓った。「夏に来る理由はできている。選手としてみんなをここに連れてきたい」(菅沢百恵、森本類)