三重―星稜 八回裏星稜2死満塁、奥川は中前に2点適時打を放つ。投手吉井、捕手東=加藤諒撮影
(1日、選抜高校野球 三重14―9星稜)
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試合の流れを1人で変えられる。星稜の背番号「11」をつけた2年生右腕・奥川恭伸(やすのぶ)は、そんな選手だ。
2回戦では三回途中から好救援し、味方の逆転を呼び込んだ。3回戦は六回途中から延長十回までを無失点に抑えただけでなく、サヨナラ打も放った。負けたこの日の準々決勝も奥川はヒーローになりかけた。
三回途中まで7失点だった先発竹谷理央に代わって登板。七回までを2失点に抑えた。じりじりと味方打線が点差を詰めると、八回2死満塁で回ってきた打席で中前へ同点適時打を放った。
しかし、直後の九回のマウンドではこれまでのように粘れなかった。「疲れは感じていなかったが、打者が自分の球を苦にしていなかったのは分かった」。先頭打者を失策で出すと、連続単打で失点。さらに四球を出したところで交代を告げられた。「一球、一プレーの重さをすごく感じた」と奥川はしみじみと語った。
身長182センチ、81キロのバランスの取れた体から最速146キロのストレートとキレの良いスライダーを投げ、将来性を感じさせる選手だ。中学時代には軟式野球で全国大会優勝の経験を持っている。
能力が高いだけでなく、プラス思考の持ち主でもある。
3回戦の近江戦では、ピンチを背負った延長十回のマウンドで色々とつぶやいた。
「自分はできる!」「自信を持って、安心して行け!」
結果、無失点に抑えた。そして裏の攻撃でサヨナラ打。投球で調子がいいときには自分の球の最高の軌道が見えるというが、その打席の直前では、「外野を抜けていく打球がイメージできた」という。
準々決勝で敗れた試合後、取材に一通り答えてくれた後は、きりっとした表情で前を向いた。「この大会はやりきった気持ちがある。成長できたと思います。それに優勝までの距離が分かった。制球力、スタミナをつけて夏に戻ってきたい」。そう話す奥川は大きく見えた。(坂名信行)