米通商代表部(USTR)は3日、知的財産の侵害などを理由に新たな関税をかける中国製品の約1300項目を発表した。総額500億ドル(約5・3兆円)分にあたり、25%の関税率を上乗せする案を提示。実際の発動までに約2カ月の猶予を設けており、この間に米中間で激しい駆け引きが続くことになる。
中国、米をWTO提訴へ 追加関税めぐり同規模の報復も
トランプ大統領は3月22日、不公正な貿易慣行に対して制裁する「通商法301条」に基づき、関税適用などの措置をとることを命じる大統領令に署名。15日以内に対象のリストが公表される見通しだった。
米政権は、中国政府が自国内に進出する米国企業に技術移転を強いたり、高度な知的財産を持つ米国企業を中国企業が買収できるよう不正に促したりしていると認定し、制裁措置の正当性を強調した。こうした中国の政策によって利益を得たとする品目から、対象を絞り込んだと説明。電子機器類や半導体装置、航空機部品などのハイテク分野を中心に幅広く対象とした。
特にUSTRは、中国政府が2015年、最先端技術を育てるために打ち出した「中国製造2025」を狙い撃ちにした。中国がIT、ロボット、航空宇宙、電気自動車などの発展に向け、10年計画で産業構造を転換しようとするものだ。
米政権は、中国がこうした政策の陰で米国の技術を不正に入手し、ハイテク分野で覇権を奪おうとしているとの危機感を強めた。関税を「武器」として、中国の動向を牽制(けんせい)しようとの狙いがある。トランプ氏は3日の記者会見で「中国には知的財産を盗まれている」と重ねて強調していた。
USTRは5月下旬まで公聴会やパブリックコメントの機会を設け、「関税が中国の行動や政策、慣行を止めさせるのに実行可能か、効果的か」といった点について意見を募る。
米政権は今回の制裁措置とは別に、中国などに対し、安全保障を理由とした鉄鋼・アルミ製品への関税も発動している。中国はこれに対し、2日から米国産ワインや豚肉などに高関税をかける報復措置をとった。制裁と報復の応酬で、世界経済を大きく混乱させることが懸念されている。(ワシントン=青山直篤)
米国が25%の関税率上乗せを検討する1300項目のおもな内訳
金属類▽半導体装置▽輸送機器類▽電子機器類▽エンジン▽モーター▽船舶▽航空機部品▽電池▽薬剤▽人工歯▽ペースメーカーなど