力投する近大付の花田
春季大阪府大会で8日、近大付が初戦で姿を消した。昨秋の近畿大会で8強に入り、今春の選抜に出場する可能性もあったチームだ。
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1回戦の相手は、秋に3―2と苦戦を強いられた箕面学園。藤本博国監督はエース左腕の大石晨慈(しんじ)を温存した。先発を託したのは、秋まで1番を打っていた花田大晟(たいせい)だった。
花田は公式戦初登板。五回までは内角を攻める強気な投球が光り、無失点に封じた。だが、打線の援護がないまま迎えた六回、先頭に四球を与え、それを足がかりに2点を先制された。
これ以上の失点は避けたい。そんな状況なのに、藤本監督はエース大石を出さなかった。「夏は大石だけじゃ勝てない。2人目の投手というよりも、エースを奪いにいくような投手が必要」と考えていたからだ。
花田は、1カ月前の3月に投手に転向したばかり。主将を務める彼なら大石に依存せず、「隙あらばエースの座を奪う」という思いで取り組んでくれるとにらんでいた。春の府大会で経験を積ませ、10年ぶりの甲子園出場がかかる夏へ――。
そんな監督の思惑は、たった1試合で崩れた。花田が6番に入ったことで、1番打者が代わった打線はつながりを欠き、1得点どまり。花田は完投したが、9四球を与えた。リードを奪えないまま、1―3で敗れた。
大石に故障などの不安があったわけではない。エースは昨年末、大阪桐蔭が中心だった「大阪選抜」に加わり、台湾遠征を経験した。「高いレベルを体感して、たくましくなって帰ってきた」と監督も成長に手応えを感じている。ただ、大黒柱1人だけで勝ち上がれるほど、激戦区・大阪の夏は甘くない。
100回記念大会のため、南北に分かれる大阪。近大付が入る南大阪大会まで、あと3カ月だ。花田は険しい表情で言った。「まだ夏の試合を任せてもらえる投手ではない。この春の負けを無駄にしない」。藤本監督は、この意気込みにかけている。(小俣勇貴)