「家庭を明るく」というタイトルのパンフレットには「遺伝性の病気や奇形の発生をふせぐには結婚相手の血族者に遺伝性の病気や奇形のない人を選ぶこと」と書かれていた=2018年5月8日、東京都内
東京都は8日、かつての優生保護法のもと、1949年から82年の間に都内で少なくとも529人が強制不妊手術を受けていたことがわかったと発表した。新たに記録が見つかり、これまでの調査より19人増えた。また、都が不妊手術を推し進めていたことを示す資料や、病院など12施設が残した記録が見つかったことも明らかにした。
旧優生保護法のもとでは、精神疾患や知的障害などを理由に、本人の同意がないまま不妊手術が強制されていた。都は今年2月、旧衛生局の「衛生年報」をもとに、49~66年に510人が強制不妊手術を受けたことを確認。さらに調べた結果、「精神保健福祉」(旧名・精神衛生)と題した年報には69~96年までの記録があり、82年まで計19人が手術を受けたと記されていた。ただ、個人を特定できる情報はなかった。
529人の内訳は女性337人、男性141人、性別不明51人。このほかに同意のもとに不妊手術を受けた人も140人いた。67、68年の2年分は記録がない。
また、昭和30年代の旧衛生局の「事業概要」が見つかり、「(不妊手術が)増加しており、喜ばしい」「医師側に該当対象の発見と申請について協力を求めている」といった見解が記されていた。当時のパンフレットには「精神分裂病(現在の統合失調症)の人は子供を作らないようにすることが必要」などと書かれ、保健所に設けた「優生保護相談所」への相談を広く呼びかけていた。都の担当者は「当時は都は国の方針に沿って対応していたと思うが、今では考えられない内容。人権侵害だ」と話した。