大分県立情報科学高野球部で打撃を指導する内川一寛さん
球界屈指の好打者が苦しんだ末に、大記録に到達した。ソフトバンクの内川聖一が9日、西武戦の八回1死一塁から3試合ぶりとなる中前安打を放ち、通算2千安打を達成。昨年9月に阪神の鳥谷が達成して以来、プロ野球史上51人目。横浜(現DeNA)、ソフトバンクで主軸を担ってきた35歳がプロ18年目で成し遂げた。
ソフトバンク・内川聖一、2千安打達成 史上51人目
内川は打者として遅咲きだった。打撃開眼は、横浜時代のプロ8年目。最多安打、首位打者など初タイトルを獲得した2008年だろう。ちょうど、杉村繁コーチ(現ヤクルト巡回コーチ)との出会いと重なる。
当時、1軍の若手を指導していた杉村コーチが、内川の弱点を見抜いていた。「(球を捉える)ミートポイントが前過ぎるから、体勢を崩されやすい。もっと広角に打ったらどうだ」
ミートポイントが前になり過ぎると、右打者なら左翼への打球。引っ張りになりやすい。そのため、これまでより「ボール1、2個分くらい」、体の近くまで引きつけて打つ意識を徹底させた。左翼、中堅、右翼と広い角度に打ち分ける打法へと導いた。
新しいポイントを覚えさせるため、試合前に毎日1時間振り込んだ。体の真横からトスをあげて打たせるものなど、7種類ものティー打撃を繰り返した。これで、振る力も高まった。「(打球が)詰まっても、いつでもフェアゾーンに落とせる力があるから打席で慌てない」と杉村コーチ。4月下旬からレギュラーに定着し、安打を量産した。
広角打法の土台は、大分工高時代の監督で父の一寛さんとの練習で築いた。太さ約30センチの丸太を立てて金属製バットで打ち倒す「丸木打ち」。スイングで無駄な動きが入り、バットの芯を外そうものなら、手がしびれて丸太も真っすぐ倒れない。手がしびれずに真っすぐ倒すことで構えた位置から最短距離で球を捉え、ライナーで打ち返す無駄のないフォームができた。
08年以降は横浜、ソフトバンクで9年にわたり140安打以上を記録し、安打数を伸ばした。「どこに放られても安打にする。相手にとって嫌な打者になった」。ヤクルトで青木、山田哲も指導してきた杉村コーチも認める存在になった。(甲斐弘史)