熱戦を制して喜ぶ錦織圭=AP
テニスのイタリア国際は16日、男子シングルス2回戦で世界ランキング24位の錦織圭(日清食品)が16強入りを決めた。第3シードの同4位、グリゴル・ディミトロフ(ブルガリア)に6―7、7―5、6―4で逆転勝ちした。
「本当に紙一重」。辛勝した錦織が振り返った。
記者会見で「心が折れかけた場面」を挙げてもらった。キープすればセットを奪える第10ゲームを失い、タイブレークで第1セットを失った場面は「弱気になってつけ込まれた」。ベースラインを割ったと確信した相手の打球を主審に覆された場面もあった。「確実にアウトだった。納得いかない部分があっても従うしかないので、仕方ないですけど」
窮地にめげない。錦織本来の「粘り気」を2時間56分の死闘で再確認できた。
右手首故障による長期離脱の影響で世界ランキングは24位。大会序盤で上位勢との対戦が避けられるシードの恩恵がない。前週は1回戦で10連敗中の元世界1位、ジョコビッチ(セルビア)と当たり惜敗。今大会は2回戦で同4位と当たった。「ありえない日常が続いているので、早く上がりたい」
今大会の結果次第で全仏オープン(27日開幕)の上位16シード入りが狙える。「ひそかには思っていますよ。大々的に目標にしてもプレッシャーがかかるので心の底の底ぐらいで」。サービス精神旺盛なコメントに、心の余裕が透ける。
「相手が誰であろうと、勝てそうな気は徐々にしている。試合前も楽しみな気持ちで入った」。その心境でコートに立てれば、類いまれな遊び心が呼び覚まされる。完全復活は近い。
大坂「心がしょげた」
世界1位のハレプとの対決にあたり、大坂に覚悟はあったはずだ。「彼女はクレーでは驚くくらい俊敏に動ける」。1回戦に勝った後の記者会見で、そう印象を語っていた。
出だしは好調で、第1セット第2ゲームでいきなりブレークチャンスをつかんだ。しかし、粘られた末にキープを許した。チャンスを逃した後にピンチが訪れるのは、勝負事ではよくある。直後のサービスゲームでブレークを許すと、流れは一方的になった。記者会見で大坂は「心の中がパニックになっていたわけではないけれど、少ししょげてしまった。頭が整理できていなかったというか」と話した。大坂が6回あったブレークポイントを1度も生かせなかったのに対し、ハレプは7回のうち、実に6回を生かす効率の良さを発揮した。大坂は次第に戦意が喪失し、球を追いかける気力も減退していったのは残念だった。(稲垣康介)