東京製鉄の西本利一社長
東京製鉄 西本利一社長に聞く
人手不足が拡大し、経営の先行きに暗い影を落とし始めた――。東京製鉄の西本利一社長は、こう危機感を募らせている。
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人手不足がいろんなところで明らかにボトルネックになって、業務の進捗(しんちょく)が制約されています。
鉄鋼の需要が伸びている上に、建物の構造が複雑になってきて、それに対応できる力量のある技術者がより求められるようになってきた。それなのに設計者がいない。現場施工者がいない。もっと拡大できるはずの業務が抑えられているのです。
さらに深刻なのは、物流面です。製品を作っても運んでもらわなければお金にならないのに、肝心なドライバーが足りない。長時間運転の抑制などドライバーの安全確保のために規制が強化されたこともあり、新規参入する業者が少ないからです。
私たちは業者側に支払う物流費を2割上げてドライバーを確保しましたが、製品を運べないという問題が現実化し始めている会社もあります。中小の業者の中には、搬出できない製品が工場内に滞留してやむなく生産を止めたところもあると聞きました。
主要拠点を結ぶ長距離の定期便の中にも、定期的な運行をやめ、トラックを確保できてからようやく運行を決めるというケースも出始めています。
自動運転の実現もまだ時間がかかるでしょうから、規制緩和と待遇改善によって、新規労働者が来てくれる環境にしないといけません。物流業者側からはかなりの値上げを言われていますが、それはのんでいかないとさらに状況が悪化してしまう。
うちは生産量を2030年には今の倍にする計画を立てています。今後、生産を増やさないといけないときに人手不足の問題が現実に生じてくる可能性があるんです。(聞き手・野口陽)