東京大会組織委のアンチ・ドーピング課検査チームの係長を務める原恵美子さん(左)と佐々木徹也さん
2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会のアンチ・ドーピング課に平昌五輪・パラリンピックを経験した係長2人がいる。収集した情報を東京大会に生かそうと奔走している。
一人は、大会公式スポンサーの衛生陶器大手TOTO(北九州市)から出向している原恵美子さん(45)。昨年4月から検査チームの係長に就き、検査員の人材確保や教育啓発活動を中心に仕事に取り組む。
平昌五輪では約1カ月間、本部のコマンドセンターで、データ作成の準備や検査室への備品搬入などに携わった。他国から来た検査員と同じ施設に宿泊し、検査員間の言葉の壁や移動用バスの運行トラブル、宿泊所の環境などへの愚痴も聞いた。人の配置の難しさを痛感し、「2D(2次元)だった前情報が3D(3次元)になった」という。
マラソンに参加するほどスポーツ好きで、社内公募を見て東京五輪に関わりたい一心で応募した。「アンチ・ドーピングの活動に会社として共感した。何かお手伝いできればいい」
もう一人は、札幌市から出向している佐々木徹也さん(45)。昨年4月から、組織委で各会場の検査室のレイアウトや、検査を行う予算の調整などを担う。
約3週間参加した平昌パラリンピックでは、連日深夜まで検査情報データの入力などに追われた。「ミスをしたら、検査自体が無効になるかもしれない」という緊張感は想像以上だったという。
昨年2月の札幌冬季アジア大会でも、医療とアンチ・ドーピングを担当した。41歳からアイスホッケーに夢中になり、今も「地域の草チームのご厄介になっています」と笑う熱血漢。「100点満点というか、確実にやらないといけない使命感を日々感じています」。こうした体験を、最終的には冬季五輪・パラリンピック開催を目指す札幌市に還元したいという。(遠田寛生)