8強入りを逃し、頭を抱える日本のサポーターら=2018年7月2日、ロストフナドヌー、長島一浩撮影
サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会で、日本は3日、世界ランキング3位のベルギーに逆転負けし、史上初のベスト8入りを逃した。歓喜の絶叫は落胆のため息に変わったが、直前の監督交代からの快進撃に、健闘をたたえる声が上がった。
真っ向から攻め、たたみかけた 8強に近づいた4分間
「日本こわかった」「少しの運の差」歓喜のベルギー国内
2018ワールドカップの日程・結果
試合会場のロシア・ロストフナドヌーのスタンドには、試合が終わって15分がたっても、その場から立ち上がることができず、ぼうぜんと座り込む日本人ファンの姿があった。3度目の決勝トーナメント進出だったが、またもベスト8入りはならず、「なんで3回も16強止まりなんだよ」と声が漏れた。
2点を奪った後、ベルギーに1点を返されると、日本人たちの顔に不安の色が広がる。同点に追いつかれ、終了間際の逆転。狂喜乱舞するベルギー人の姿を、日本サポーターは、見つめるしかなかった。
「まじか。これで終わりか……」と座り込む日本サポーターらに、海外のファンが「君らはグッドルーザー(よき敗者)だ」「日本が勝つべき試合だった」と次々と声をかけていった。スタジアムから歓喜の輪が去った後、スタッフに促され、一人、また一人と、重い腰を上げた。
暗闇のなか、ドン川のほとりにまばゆく光るスタジアムを見上げ、青いユニホーム姿の松田勇希さん(36)は言った。「夢、見たなあ。褒めても褒めきれないほど、いいゲームだった。でも最後、悔やんでも悔やみきれないよ」(ロストフナドヌー=高野遼)
東京のPV、多数の立ち見客
東京都港区の東京タワー脇のパブリックビューイング(PV)会場。午前3時の試合開始にもかかわらず450席が完売し、立ち見客も大勢出た。日本が2点を奪うと、跳びはねて喜んだが、逆転されて一転。大きなため息が漏れ、頭を抱えた多くの観客が1分以上、動けなくなった。千葉市の会社員、平山裕之さん(46)は「ベスト8の壁は高いですね」と座り込んだ。
試合後、ほとんどの観客が席を立たず、選手らのインタビューに耳を傾け、拍手を送った。青く髪を染めて応援していた、さいたま市の学生、滝沢彩音さん(24)は「こんなにも熱くさせてくれて、最後の最後まで期待させてくれた日本代表にありがとうと言いたい」と目を潤ませた。
東京・渋谷のスクランブル交差点では試合後、「ニッポン」コールもわき起こらず、人々は重い足取りで駅へと向かっていった。
交差点脇でぼうぜんと立ちすくんでいた東京都世田谷区の大学生、雨宮諒也(りょうや)さん(20)は「緊張感が緩んじゃったのかな」とぽつり。午前9時から大学で中国語の授業があるといい、「こういう時こそ、しっかり授業に出ます。試合は落としても、単位は落としません」。
スポーツバーで観戦した東京都港区の会社員鷺(さぎ)実樹(みつき)さん(22)は「みんな夢を見たと思う……」とうつむきつつ「僕も乾選手みたいに、大事な場面でいい仕事ができるよう頑張ります。4年後、ベスト8の壁を破ってほしい」とエールを送った。
一方、東京都千代田区のベルギー大使館では、赤いユニホームを着たベルギー人のファンら約100人が試合を見守った。終了間際にベルギーの決勝点となる3点目が決まると、跳び上がって喜んだ。そのまま試合が終了すると、両手を突き上げ、「ベルギー、ベルギー」と歓声をあげた。ピカローサ・フランソワさん(32)は「刺激的で、とてもいい試合だった。シャワーを浴びて着替えたら、職場に向かいます」と笑顔で話した。
早朝のJR新橋駅。試合をテレビ観戦し、仮眠を取ってから出勤したという会社員女性(34)は「ベルギーに圧倒される試合展開を予想していたが、良い意味で裏切ってくれた。最後は強豪国のプライドが上回った。毎試合進化する日本代表に楽しませてもらえたW杯だった」と話した。(河崎優子、吉沢英将、山田暢史、森本未紀)