後半、2点目のゴールを決め、喜ぶ乾⑭ら日本の選手たち=内田光撮影
あともう少しで、手が届きそうだった。サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会で、初の8強入りをかけ、決勝トーナメント1回戦のベルギー戦に臨んだ日本代表。一時は2点リードするも追いつかれ、後半ロスタイムに3点目を失い、敗れた。だが「赤い悪魔」と呼ばれる強豪を追い詰めた日本代表を、ゆかりの人々やサポーターたちはたたえた。
「世界で戦っていく上で、日本の可能性を感じさせた。夢を与えてくれた」
母校の野洲(やす)高校(滋賀県野洲市)サッカー部のコーチを務める長谷川敬亮(けいすけ)さん(30)は、同学年で、ともにプレーした乾貴士(30)をこう評した。
ベルギー戦はかつての先輩たちと、同県草津市内の飲食店で観戦。後半7分、乾がゴール右隅にミドルシュートを決めると、みんなでハイタッチをして喜んだ。「貴士の得意な形ではなく、難しい位置からだったが冷静に決めた。シンプルに『うまいな』と思った」
乾はこの試合で大会通算2得点目を挙げたが、試合後は悔し涙をユニホームでぬぐった。長谷川さんは「順風満帆なサッカー人生ではないが、いろんな人の思いを体現してくれる存在。今は精神的に疲れているだろうから、ゆっくり休んで欲しい。落ち着いたら連絡を取りたい」と話した。(宮城奈々)
◇
試合後、ピッチを手でたたき、全身で悔しさを表現するDF昌子(しょうじ)源の姿は、テレビで中継された。
恩師で米子北高(鳥取県米子市)の城市徳之総監督(51)は、「2点リード」という状況での試合運びの難しさを指導者としての立場で実感したという。「先行されたベルギーは、さらにパワーアップした。源もあと1点取ろうと積極的にプレーしたが、逆に相手のカウンターでやられてしまった。悔しいだろうが、(所属チームの)鹿島以外に、W杯や世界での目標もできたと思う」と、心情をおもんぱかった。
昌子は25歳。「とても成長した姿が見られた。次の4年間が楽しみ。胸を張って帰ってきて欲しい」とエールを送った。(鈴木峻)