県内の球児と17歳全体の平均身長・体重の推移
この20年で高校生の体重は減ったが、神奈川県内の球児たちの体重は1・39キロ増えた。多くの学校が食事・栄養についてチームで指導している。球児たちはどんな工夫をして体作りに取り組んでいるのだろうか。「食」をテーマに探った。
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「公立は金銭的に外部から専門家を呼ぶのが難しい」。こう漏らすのは平塚工科高の池宮改綱(かいこう)監督(28)。
そんな公立校に昨年、救世主が現れた。家庭科教諭の森丘範子さん。栄養士の資格を持ち、前任校では、その知識を生かして、運動部員らに食事や体作りの講義をしていた。
平塚工科高に赴任後の昨夏、森丘さんは野球部員たちを前に熱く語った。
「練習帰りにサラダチキンやチーズを食べると筋肉がつきやすくなるよ」
投手の鈴木海人君(3年)は入学時の体重は43キロ。練習に疲れて、夕食を抜く日もあった。
池宮監督らに「体を大きくしよう」と言われたことをきっかけに、意識して、空腹時にまめに食事をとるようにした。自然と体重が約10キロ増えた。
森丘さんの講義を聴き、「『自分でも調べてみよう』と体への興味が強くなりました」。鶏肉が苦手だったが、サラダチキンなども食べ始めると体重は60キロに。球の威力が上がった。
森丘さんは今年の夏、「自分で作れる簡単な食トレ」をテーマに、部員たちと調理をする予定だ。池宮監督は「学校にいる先生と協力していけたらと思います」。
「身長(センチ)―体重(キロ)=100以下」。こう目標を掲げるのは秦野総合高。川崎真一前部長(30)=現・海老名高=が自ら食に関する知識を学び、食トレと筋トレを採り入れた。
練習中は炊飯器で米を炊き、1人1合分のおにぎりを食べる。夏合宿は、朝から最低でもどんぶり飯を2杯。食べ終わらない部員は練習にいけないルールだ。
高校から投手になった渡辺大樹君(3年)の昼食は3合の米と、牛乳で溶かした500ミリリットルのプロテインがノルマ。量の多さに涙が出たこともあったが、入学時に44キロだった体重が60キロに。「異動した川崎部長にさらに成長した姿を見せるのが、鍛えてくれた恩返しだと思う」
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20年前と比較して、神奈川県内の17歳男子の平均体重は1・30キロ減少したが、高校球児の平均体重は1・39キロ増加した。
日本高校野球連盟などが実施した高校野球実態調査(加盟校アンケート)によると、県内の加盟校で「食事・栄養についてチームで指導している」と答えたのは145校(74・7%)。「主に誰が指導しているか(複数回答可)」について「部の責任教師や監督などの指導者」が125校、「栄養士やトレーナー、食品会社スタッフなど外部の専門家」が106校、家庭科教諭が2校だった。