米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、翁長(おなが)雄志(たけし)知事は、前知事による埋め立て承認を撤回する意向を月内に表明する。国は8月17日から辺野古沿岸部に土砂を投入すると県に通知しており、これを阻止するため「最後のカード」を切る。
辺野古埋め立て承認「撤回」表明へ 翁長知事、月内に
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謝花喜一郎副知事が19日、県庁で記者団に明らかにした。
撤回は、事業主体による承認後の重大な違反や問題を理由に、承認の効力を失わせるもの。土砂投入が続くと原状回復が難しくなるため、翁長氏はなるべく早い時期に撤回に踏み切る方針だ。
翁長氏や県は撤回する理由として、埋め立て予定地の地盤が軟弱であり、沖縄防衛局が現在の設計では安全性が確保できないと認識しながら工事を強行してきたことなどをあげるとみられる。17日には防衛局に対し、これらを根拠にして、工事の即時停止を求める文書を出していた。
一方で、撤回するには、事前に防衛局から事情を聴く「聴聞」の手続きが1カ月程度必要なため、月内に手続きを始めることにしたとみられる。
翁長氏が撤回に踏み切れば、工事は違法となるためいったん止まるが、国はその効力を一時的に失わせる執行停止を裁判所に申し立てる方針。国側の言い分が認められれば、数週間から数カ月で工事が再開する可能性がある。国は同時に、撤回の取り消しを求める訴訟も起こすとみられる。
野上浩太郎官房副長官は19日午後の会見で「政府としては引き続き関係法令に基づいて、自然環境や住民の生活環境にも最大限配慮し、辺野古移設に向けた工事を進めて参りたい」と強調。翁長氏の承認撤回方針と関係なく、土砂投入を含めた関係工事を予定通り進めていく考えを示した。(山下龍一)