強い台風12号は、東から西へ列島を横切る観測史上初めてのコースを進む見通しで、28日は東海地方に迫った。29、30日には西日本を横断する見込み。今月上旬の豪雨で被災した地域でも大雨が予想され、気象庁は早めの避難を呼びかけている。
台風12号、西日本で二次災害の恐れ 備えておくことは
同庁によると、台風12号は28日午後、伊豆諸島付近を通り、強い勢力のまま29日午前1時ごろ、三重県伊勢市付近に上陸。29日は近畿から中国付近を進み、30日にかけて九州付近を通過する。31日には東シナ海で熱帯低気圧に変わる見通しだ。
同庁は29日も東日本から西日本の広い範囲で警報級の大雨や暴風、波浪のほか、土砂災害や河川の氾濫(はんらん)に厳重な警戒を呼びかけている。中国と九州北部では30日まで大雨への注意が必要だという。
異例のコースを進むのは、寒冷低気圧の空気の流れに乗ったり、日本の北に張り出す高気圧に北上を阻まれたりするなどの要因が重なったからだ。
通常と逆方向に進む台風は、通過した後も注意が必要となる。西から東へ進む台風は通過後に乾いた北風が入って晴天となりやすいが、今回は「台風一過」とならず、通過後に南から暖かく湿った空気が入り込み、大雨や突風が起きやすくなっている。気象庁は雨の降り方や波の立ち方などに関し、「これまでの経験が通用しない場合がある」と警戒を呼びかけている。
また、28日の記者会見で桜井美菜子・天気相談所長は「台風12号はコンパクトなので、さほど風が吹いていなくても台風が接近すると急に風が強まる」と注意喚起した。台風の周辺などに発達した雨雲があり、一時的に雨が弱まっても再び強まる地域もあるという。
29日午後6時までに予想される24時間降水量はいずれも多いところで、関東甲信と東海400ミリ、四国250ミリ、近畿と中国、北陸200ミリ、九州北部150ミリ。30日午後6時までの24時間予想降水量は四国と九州北部200~300ミリ、中国100~150ミリ。
西日本豪雨で被災した広島、岡山、愛媛各県の一部自治体では、28日から避難指示(緊急)や避難勧告を発令。住民たちは台風の接近に備え、避難所に身を寄せたり自宅の浸水対策に追われたりした。
台風12号は28日午後6時現在、三宅島の南南西約40キロを西北西へ時速45キロで進んでいる。中心気圧は965ヘクトパスカル。最大風速は35メートル、最大瞬間風速は50メートル。(山岸玲)