ニホンザルの細胞から、体のあらゆる組織になれるiPS細胞(人工多能性幹細胞)をつくることに成功したと、京都大のチームが30日、発表した。iPS細胞から脳神経などに変化させてヒトと比べることで、霊長類の進化の解明に役立てられるという。
京大霊長類研究所の今村公紀助教らは、自然に死んだニホンザルの皮膚から細胞を採取。複数の遺伝子を組み込んで、iPS細胞を作製した。体のさまざまな組織のもとになる細胞や神経に変化できることを確認した。
ヒトに近い霊長類は、進化などの研究に有用な半面、傷や苦痛を与える実験をするには倫理的なハードルが高い。iPS細胞をつくることで、発生のしくみなどを容易に調べることができるようになるという。
iPS細胞は京大の山中伸弥教授が2006年にマウスで、07年にヒトで作製に成功。それ以降、医学研究に使われることの多いチンパンジーやカニクイザルでも作製できたが、ニホンザルではまだ作られていなかった。研究結果は英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。(野中良祐)