会社や家庭に転がっている市販の液体のりが、白血病の骨髄移植で重要な細胞を大量に培養できたという東京大などの成果が発表され、液体のりのメーカーや研究者に問い合わせが殺到している。名前が同じ別の会社の株の出来高が前日までの10倍になったほか、SNSでは「液体のり」がトレンドの言葉になった。
研究者が培養に成功したのは、事務用の液体のりでトップシェアの「アラビックヤマト」。販売元の文具メーカー「ヤマト」(東京都)には5月30日以降、メディアからコメントの依頼や商品の説明を求める問い合わせが相次ぎ、広報担当者は電話対応に追われた。
31日には会社のHPにコメントを掲載。「研究チームは通常の販売経路で液体のりを購入され、画期的な結果を出されました。1975年の発売以来、代わることなく愛され続けている『アラビックヤマト』を今後ともどうぞよろしくお願いします」とした。
ヤマトによると、アラビックヤマトは、昭和30年代に主流だったアラビアゴムが成分の「アラビアのり」を参考にしたことから名付けたという。広報担当者は「液体のりは紙などを接着するのが目的。今回は異なる使用方法ですが、病気に苦しんでおられる方や社会の一助となれるなら、社員一同大変喜ばしい限りです」と話した。
ヤマトは株式を上場していないが、空調工事などを手がけるまったく別の「株式会社ヤマト」(前橋市)は30日、株の出来高が26万株と、前日までの2万~3万株から10倍に跳ね上がった。担当者は「どうしてこの時期に出来高が多くなったのかわからない。原因を調査中です」と困惑した。
ツイッターなどネットでは多くの投稿があった。「机の中にあるコレですか」「きみ、すごい子だったのか!」と驚く声や、商品名にかけて「あらビックリ」とつぶやく人も。研究が進んで「早く必要な人に届くようになればいい」「医療費がかなり削減できるかも」と期待する意見もあった。
また、「研究はこれがあるから地道に続けないといけない」「しらみつぶしに探したのがすごい」と研究者をたたえる人もいた。
研究者はなぜ、液体のりで細胞を培養しようと思ったのか。実は論文が掲載される2カ月ほど前、学会でアラビックヤマトが紹介されるのを記者は見ていた。
英科学誌ネイチャーに論文を発…