スマートフォンなどから出る青色光「ブルーライト」が、視力に影響するのかどうか。目の細胞に悪影響を与えるとする、海外の科学誌の論文を発端に、論争が起きている。日本ではブルーライトをカットする眼鏡などが普及しており、SNSでも反響が広がっている。
論文は7月、英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。これを米ウェブメディアが「画面があなたの眼球の細胞を殺している」などと報じた。
これに米眼科学会が強く反応した。8月、「スマホのブルーライトでは失明しない」とのタイトルの見解を、学会のサイトに掲載。論文で示された実験の条件が、日常生活では起こりにくいと指摘し、この研究の結果をもとに、スマホをやめる理由にはならない、とした。
この学会の見解などを今月、日本のウェブメディアが報道すると、国内でも「ブルーライトは危険なのか? 安全なのか?」などと反響が広がった。
これを受けて、眼科医らでつくるブルーライト研究会(世話人代表・坪田一男慶応大医学部教授)は5日、「ブルーライトの影響は慎重に検討していかなければならない」などとする文書を発表した。研究会の担当者は、朝日新聞の取材に対し「(国内の報道は)ブルーライトの安全宣言のような報道になってしまっている」と話した。
米眼科学会の見解では、「ブルーライトは人間の体内時計に影響することは証明されている」として、寝る前に画面を見る時間を制限することを推奨。ブルーライトをカットする特別な眼鏡は勧めていない。目への影響が心配な場合は「主治医に相談してほしい」としている。(田中誠士、合田禄)