国民の3割が悩んでいるとも言われるスギ花粉症。今年も花粉が飛び交う時期を迎えた。花粉をつくらない、飛ばさない技術開発は進むが、課題も多い。空に煙るあの黄色い粉を少しでも減らせる日は来るのか。
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スギ林で研究者が木を1本1本棒でたたくたび、黄色い花粉がもうもうと舞い散る。くしゃみに耐えながら探しているのは、たたいても花粉が出ない「無花粉スギ」だ。
自然界では数千本に1本の割合で、雄花が花粉を作らない突然変異のスギがある。日本では1992年に富山県で初めて見つかり、これまでに約20本が確認された。
林野庁によると、国内の森林の4割を占める人工林のうち、スギ林は4割を超える。多くは、戦後の高度成長期に木材需要の急増に応じて植林された。半世紀が過ぎて木が成熟し、いま大量の花粉を放つようになっている。
無花粉スギを増やして、植え替えを進めれば、花粉が飛ばないスギ林に変えられるかもしれない――。こんな期待から、森林総合研究所(茨城県)や一部の県などが無花粉スギを探している。
ただ、無花粉スギはもともと成長が遅く木材としての質がよくない。苗木にするには、優れた木材になる「精英樹」と交配させて品種改良する必要がある。スギは雌雄同体で、1本の木に雌花と雄花が「同居」している。無花粉スギの雌花に別の木の花粉を受粉させて苗木を育てる。
だが、ふつうに交配させただけでは、半分以上が花粉を作るスギになってしまう。しかも、それが分かるのは、2~3年ほど育てて、花粉の有無が判別できるようになってから。木材としての品質を見極めるには、10年以上かかってしまう。
そこで、森林総研は、スギのD…