全身の筋肉に骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」の進行を抑える新たな物質を発見したと、京都大が発表した。FOPではすでに患者のiPS細胞を使って発見した薬の効果を確かめる治験が進んでいるが、作用が異なる物質が見つかったことで、病気のメカニズムの解明に役立つ可能性があるという。
FOPは200万人に1人が発症し、国内の患者は約80人とされる。根本的な治療法はない。
京大iPS細胞研究所と大日本住友製薬(大阪市)のチームは、FOPの特徴を再現したマウスの細胞を使い、約5千種類の物質から効果がありそうなものを7種類選んだ。これらを患者のiPS細胞を使って詳しく調べ、2種類の物質を絞り込んだ。
2種類は、ほかの企業ががんやアルツハイマーの薬の候補として開発したが、治験の途中で断念したもの。いずれも、FOPで治験が進む免疫抑制剤「ラパマイシン」とは異なる仕組みで骨ができるのを抑えていた。
市販薬ではなく安全性が未確認のため、すぐには治験につながらないが、京大の池谷真准教授は「病気の解明という基礎的な部分に役立つ」と話している。
成果は、2日付の米科学誌ステム・セル・リポーツに掲載される。(野中良祐)