ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授(76)が5日、愛知県豊明市の藤田保健衛生大で講演した。受賞決定後、初めての講演となり、集まった同大の研究者や学生ら約2千人から、大きな拍手で迎えられた。本庶さんは研究の過程や、がん治療薬「オプジーボ」の開発までの経緯などを紹介。「21世紀は、免疫の力でがんを抑えられるのではないか」と語った。
【特集】ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった本庶佑さん
本庶さんらは、免疫細胞の表面にあるブレーキ役の分子「PD―1」を発見し、この分子の働きを妨げる「オプジーボ」の開発につながった。ただ、これらの研究はネイチャー、サイエンスなどの有名科学誌に載ったものではないとし、「そういう雑誌に載らないからだめだと思うのは間違い」とし、外部からの評価にこだわらないことの大切さを学生らに訴えた。
本庶さんは「免疫力こそががんを治す力だが、オプジーボが効く効かないの判断は、まだ十分でない。副作用への対応の仕方も課題だ」とも指摘した。
肺がんなどで保険診療になっているオプジーボと異なり、科学的根拠がない治療を「がん免疫療法」とうたい、自由診療で提供している医療機関も多い。講演後に会見した本庶さんは「(科学的に裏付けのないがん免疫療法を)お金もうけに使うのは非人道的だ。わらにもすがる思いの患者に証拠のない治療を提供するのは問題だ」と強調した。(後藤一也)