北海道地震で、札幌市のベッドタウンが液状化による大きな被害を受けた。道路が陥没したり、マイホームが大きく傾いたりした光景に、住人らはショックを隠せない。専門家は、かつてあった川沿いに被害が集中していると分析し、二次被害に注意を呼びかける。
札幌市東部にある清田区里塚地区は、1970年代後半から住宅地として整備されてきた。
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北海道で震度7、道内の被害状況は
この地区で暮らす建設業の清本翔馬さん(27)は、昨年建てたばかりの2階建て住宅が市の応急判定で「危険」とされた。妻の紗耶佳(さやか)さん(28)と「なぜ自分の家が」と頭を抱えている。
6日未明、翔馬さんは激しい揺れで目が覚めた。恐る恐る外に出ると、雨が降っていないのに水が激しく流れる音がする。自宅前の道路が背丈ほど陥没し、濁流となっていた。
40年ローンで建てたマイホーム。加入する地震保険では、建築費の3分の1しかカバーできない。「先は見えないが、親も里塚で暮らし、自分が生まれ育った場所。またここで暮らしたい」と翔馬さんは話す。
市宅地課によると、里塚地区は河川を覆って地下に水路を残し、周辺から削った土砂で造成されたという。30年近く住む町内会長の盛田久夫さん(74)は「まさかこんなことになるとは」と驚きを隠さない。
被害が大きかった地域は約5ヘクタールに及ぶ。市が7~12日に実施した応急危険度判定では、里塚地区などの計539件中、倒壊の恐れがある「危険」は85件、「要注意」は88件あった。
同じ里塚地区でも、被害には大きな差が現れた。清本さん宅から直線距離で約200メートル離れた近藤陽子さん(43)宅は食器が落ちた程度で、液状化の影響をほとんど受けなかった。「同じ里塚なのに別世界のよう。私たちは被害が少なかったけれど、避難する方や陥没した道路を見るたびに、里塚の傷の大きさを痛感しています」(渡辺朔、井上昇、遠藤隆史)
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北海道大の渡部要一教授(地盤工学)は地震直後に札幌市清田区里塚周辺の現場に入り、地面の陥没や隆起、地中から土砂が噴き出している様子などを調査した。さらに12日、朝日新聞がチャーターしたヘリコプターに同乗し、上空から現場周辺を目視した。
渡部教授によると、現場周辺はかつて田んぼが広がり、川も流れていた。今回、被害が大きかった住宅や公園は、かつて流れていた川沿いに集中していることが上空からも確認出来たという。
「地震による液状化で流動化した地盤が、土砂となってかつての川に沿って地下で動き、それが一気に地上にあふれた。さらに、そこに水道管の破裂によって生じた水が加わったことで、泥水が道路を冠水させたと考えられる」
渡部教授は、さらに被害が拡大することを心配している。「もし、この仮説通りの液状化が起こっているとすれば、土砂が流れ出た後の地下の地盤は空洞化している恐れがあり、現場周辺では陥没などの地盤の変化を注意深く見守る必要がある」と話している。(田之畑仁)