米証券取引委員会(SEC)が、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)を証券詐欺の疑いで提訴した。SECはマスク氏が不用意なツイートで市場を混乱させたことを厳しく追及。本人や会社側は対決姿勢を強めているが、経営者としてのマスク氏の立場が危うくなりかねず、市場には不安感もある。
テスラCEOを証券詐欺の疑いで提訴 「非上場」投稿で
マスク氏が苦悩告白→テスラ株急落 「最も困難な1年」
「セレブ(著名人)でも、技術革新をもたらすと評判の人でも、証券取引法の例外とはならない」
SECの幹部は27日の緊急会見で、こう語った。
マスク氏は、先見の明がある「ビジョナリー」として知られる。2002年には米民間航空会社「スペースX」を創業して、米国の宇宙ビジネスを牽引(けんいん)。03年に創業したテスラ社では、EVで次世代の米自動車ビジネスをリードする。そんなマスク氏でも、市場を混乱させれば、SECが徹底的に取り締まる姿勢を明確にしたのだ。
マスク氏は8月7日、「1株420ドルで、テスラ社を非上場化することを検討している。資金は確保した」とツイート。株価は直後に急騰したが、その後、「ツイートは不正確」との見方が広がり、株価は乱高下した。マスク氏は8月下旬、「非上場化」の断念を表明した。
SECは27日の提訴で、8月7日のツイートは誤りで、投資家を惑わした証券詐欺の疑いがあるとし、ニューヨークの連邦地裁に本人への制裁金のほか、上場企業の取締役に就くことを禁じるよう求めた。
SECは会見で、「ツイートした際、マスク氏は実際には資金を確保しておらず、それどころか、価格を含めた重要な条件について、投資家との協議もしていなかった」、「当時の株価に2割上乗せし、さらにその価格を『420ドル』に丸めたのは、大麻の隠語『420』に合わせたもので、交際相手を喜ばせようとしていた」などと疑義を列挙し、マスク氏の行動を強く批判した。
米ウォールストリート・ジャーナルによると、SECとマスク氏の間では直前まで和解する方向で話が進んでいたが、最終盤に決裂し、今回の提訴に至ったという。
提訴に対し、マスク氏は「SECの不当な行動に、深い悲しみと失望を感じている。私はいつも、真実、透明性、そして投資家の利益を最大化するために行動してきた」と表明。テスラ社と取締役会も共同声明で「彼の誠実さ、リーダーシップに全幅の信頼を置いている」と訴えた。
テスラが社をあげてマスク氏を…